望み−21


キラは女の子


「えと、アスラン、お仕事いいの?」



キラはアスランに手を引かれて、ガモフの通路を進んでいた。

黙っているとドキドキが止まらないので、とりあえず気になったことを訊いてみる。



ミゲルさん、作業が一段落ついたら送ってくれるって言ってたんだけどな。



キラだって、ここがみんなの仕事場であることくらいわかっているのだ。

ミゲル達も、毎日、作業やトレーニングを繰り返している。

当然、アスランも予定というものがあるはずだ。



「今日は、イージスの調整だからね。

 キラがいなくちゃ、仕事にならないよ」

「・・・そうだっけ?」



隊長さん、そんな風に言っていたかな?

っていうか、具体的に予定は立てていなかったんじゃあ・・・



「そうだよ」

「ふ〜ん。

 じゃあ、今日はずっと一緒にいられるんだね」



きっぱりと言い切るアスランに、キラもこれ以上訊くのは止めた。

昔から、キラはアスランに口で勝てた例しが無い。

それに、アスランと一緒なのは、落ち着かなくもあるが、嬉しさのが上なのだから。



キラは、アスランに握られた手を引き、体をアスランに近づけた。

突然のことに驚いたアスランが振り向いて力が抜けた手から手を取り戻す。

そして改めて、アスランの腕にその手を絡めた。



「キラ?」

「こっちがいいの」



もう片方の手も添え、首を傾げて、アスランの肩に懐く。



「この方が、楽だも〜ん」



嘘は言っていない。

手を繋いだ状態だと、曲がる度に、後ろにいるキラが振り回されてしまう。

だから手を放すか、べったりくっついてしまった方がいいのだ。

だが、もちろんキラの理由は別にある。



手を握られてると、やっぱり落ち着かない・・・



キラ自身にもよくわからないが、腕を組むより、手を握り合う方が意識してしまうようだった。



***



アスランに連れられたキラがイージスを降りる。

ヴェサリウスの格納庫では、既にニコルが待っていた。



「アスラン、キラさん、おはようございます」

「おはよう、ニコル」

「おはようございます、ニコルさん。

 ・・・って、アスラン!?」



キラは、アスランがキラの腰を抱いたまま、ニコルを置いて移動し始めるのに気づき、声を上げる。

しかし応えないアスランに、慌てて首を捻ってニコルを見た。



「キラさん、また後ほど」



ニコルが当たり前のように手を振って見送っているのに、キラは頭に疑問符を浮かべる。



「仕事は?」

「後でね。

 先に、キラの部屋へ案内するよ」



***



トリィ



電源を入れられ、キラの手から飛び立ったロボット鳥は、差し出したアスランの手へと留まった。



「トリィも、アスランに会えて喜んでるね」

「キラ・・・。

 トリィは感情をもっていないよ?」

「関係ないの。

 私が嬉しいんだから、トリィだって嬉しいの」

ねぇ、トリィ。



トリィ



「ほら、ね?」

「・・・そうだね」



苦笑するアスランに、キラが頬を膨らます。



「あ、バカにしてる?」

「そんなことないよ」

「でも、笑ったでしょっ」

「そりゃ、キラが可愛いからだよ」

「子供っぽいって?」

「それもあるけどね」



ますます拗ねるキラの頬に、アスランは手を伸ばした。



「ほら、こんな風に膨れるのは子供な証拠だしね」



アスランに頬をつつかれ、キラが恥ずかしそうに顔を赤らめる。

だんだん落ち着かなくなってきたキラは、そわそわと目を彷徨わせた。



ううう。

な、なんか、2人きりなのが、緊張する・・・。



*** next

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