望み−20


キラは女の子


「ああ?

 キラ、なんでいるんだ?」

「むっ。

 ディアッカさん、ひどいです。

 いちゃいけません?」



朝食をとっていたキラは、正面に座りながら掛けられた声に、不満をもらした。



「いや、いや、そうじゃなくて。

 てっきりあのまま、あっちに居着くかと思ってたんだって」

「ああ、うん。

 今日から、ヴェサリウスに移るつもりです」

「よく、こっちに帰ってこられたなぁ・・・」

「え?

 ちゃんとミゲルさんが乗せてきてくれましたけど」

「いや、あいつがさ」



言いながら、昨日のアスランの様子を思い出してしまったディアッカは、顔を顰める。

それを見て、キラも察した。



「アスランねぇ。

 うん、ちょっと振り切ってくるのは大変、だったかな」



キラも思いだして、こちらは頬を染めている。



「手を、なかなか放してくれなくて///

 嬉しいんだけど、でも・・・

 アスランは、前と同じに接してくれているだけなんだろうけど。

 私は、異性として好きだから。

 アスランといると、ドキドキして落ち着かないんですもん。

 想像以上にかっこよくなっていて、びっくり」

「ああ、そう」



惚気られているわけね、俺。



「あ、もちろん、もうドキドキしないわけじゃないんだけど。

 やっぱりアスランの傍にいたいと思うし」

「はい、はい」



ディアッカの気のない返事も、幸せいっぱいのキラは気にしない。



「それに、昨日はトリィをこっちに置いて行っちゃったんで・・・。

 トリィだってアスランに会わせてあげないとね」



その時、第三者の声が割り込んできた。



「そうだね、俺も是非」

「「アスラン!」」



キラとディアッカが振り向くと、そこにはパイロットスーツのままのアスランが立っていた。

見事に揃ってその名を呼んだ2人だが、そこに含まれるものは明らかに違う。

ディアッカは、僅かに体を引き気味にしていた。

対してキラは、ガタンと椅子を鳴らせて立ち上がり、身を乗り出している。



「アスラン、どうしたの?」



スタスタと近寄ってくるアスランに、キラは不思議そうに訊いた。



来るって、言っていたっけ?

違う、よね。

ミゲルさん、また送ってくれるって言っていたもんね。



「もちろん、キラを迎えに来たんだよ。

 ああ、トリィも、ね」

「あ、ありがとう///」



キラに向けられるアスランの笑顔に、キラはまたも頬を染める。

ディアッカは、固まっていた。



「食事は、終わったかい?」

「うん。あ、アスラン・・・」



キラのトレイをちらっと見てアスランが訊くと、キラは頷いた。

それを受け、アスランはそのトレイに手を掛ける。

キラはアスランが片づけようとしてるのかと思った。

それで止めようとしたのだが、思わぬ行動に出たアスランに、言葉が止まる。



「ディアッカ、これを頼むよ」



なんと、キラの食べ終えたトレイを、ディアッカの方へ差し出したのだ。

そして固まったままのディアッカが応えるのを待たず、キラの肩を抱えるようにして、歩き出す。



「あ、あの、アスラン!?

 わ、悪いわよ。

 自分のは、自分で片づけなきゃ」

「大丈夫。

 彼は、キラを甘やかすのが好きらしいから。

 そうですね、ディアッカ?」



戻ろうとするキラを抑えながら、アスランはディアッカを振り向いた。

睨まれたディアッカは、びくっとしながら、思わず首を縦に振ってしまう。



「ほら、行こう」

「あ、ディアッカさん、ありがとうございます」



2人が出ていくと、ディアッカは大きく息をついて、椅子に座り直した。



すっげぇ、嫉妬。

ここずっと、キラと一緒だった俺達が、気に入らないわけね。

キラも、鈍いよなぁ。

あれのどこが、幼なじみ相手の態度だよ。



と、そこで、昨日もうひとりの同僚に提案したことを思い出し、ディアッカは青くなる。



って、これでイザークが挑発したりしたら・・・



イザークが、アスランにどうされるか。

その後、イザークがどんなに暴れるか。

想像で、ディアッカは頭を抱えてしまった。



*** next

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