望み−19


キラは女の子


「キラ、衝動的な行動は、相変わらずだね?」



アスランは咎めるような口調で言った。

キラの手を握り、微笑んだままでは、そうは聞こえなかったけれど。



「でも、無事で良かった」



今後の予定を決め、クルーゼが去った後、アスランはキラからこれまでの話を聞いた。

それで、モルゲンレーテの工場で会ったのがやはりキラであったと知り、アスランは安堵を感じる。

あの時、誤ってキラを傷つけてしまわなくて良かった、と。



「キラは、俺のことわからなかった?」



口ではそう訊きながら、しかしアスランはそうでないことを確信していた。

自分は、名前を呼ばれたのだから。



「アスランだと思ったんだけど・・・

 一瞬だったし。

 ヘルメット、被っていたでしょ。

 それに、アスランが戦争してるなんて思わないもん」

「軍人になった俺は、嫌いになるかい?」

「まさか!」



アスランからの意外な言葉に、キラはきっぱりと否定した。



「そんなはず、無いでしょ!

 アスランは、アスランだもん。

 ・・・変わってないよ、アスラン」

「・・・3年前のままかい?」

「あん、そうじゃなくてっ。

 優しくて、綺麗で」

「キラも、とても可愛いよ」

「・・・ありがと///

 ・・・・・・・・・じゃなくてっ。

 今は、アスランの話っ。

 イザークさん達の話を聞いて、アスラン変わっちゃったかと心配だったのっ」



途端、不穏な空気を纏ったアスランに、キラ以外の人間は気づく。

そのアスランが口を開く前に、ミゲルがキラに話しかけた。



「よ、良かったな、キラ」

「うん。ありがとう、ミゲルさん。

 ミゲルさんのお陰だね。

 こうして、アスランにまた会えたの。

 ね?」



ミゲルに満面の笑顔で答えたキラは、アスランに同意を求める。



「ああ。

 ありがとう、ミゲル」

「あ、いや、まぁ」



怖いっ。

怖いぞ、アスランっ。

頼むから、そんな心にも無いような笑顔を向けるなっ。



アスランの目は、ちっとも笑っていない。

笑っていないどころか、ミゲルは睨まれている気がした。



俺が、なんかしたか?



「イザークさんと、ディアッカさんも。

 2人とも、親切にしてくれたの。

 あ、そうそう。

 イザークさん、綺麗でびっくりしたんだ。

 アスランと同じくらい綺麗な人っているのね」

小さい頃の2人を並べてみたかったなぁ。



「僕はどうです?」



それまで黙ってそのやりとりを見ていたニコルが、不意に口をはさむ。

イザークとディアッカは、アスランの変わり様に動揺したのか、退室していた。

ニコルも驚いたが、それよりも好奇心が勝ち、この場に残っている。



「ニコルさん、でしたよね?」

「ええ。

 ご挨拶がまだでしたね。

 僕は、ニコル・アマルフィです。

 アスランの同僚で、今はブリッツに乗っています」



同じく同僚のはずのイザーク達と違い、ニコルはアスランにかなり好意的なことをキラは感じとった。



「キラ・ヤマトです」



***



「なぁ、キラ、良かったのか?」

「何がです?」



キラはニコルと会話の後、ミゲルの腕を引いて帰ろうと言いだし、今2人はストライクの中にいる。

いや、確かにミゲルはガモフで仕事が待っているのだが。

キラは、ヴェサリウスに移ってもいいとクルーゼの許可が出ている。



「アスランといたいんじゃないのか?」

「ん・・・、そうなんですけど。

 ちょっと、緊張するんで」

「今さら?」

「だって、前はただの幼なじみのアスランだったんですもん。

 好きって思ったら、ちょっとドキドキしちゃって」



頬を染めながらのキラの科白は、ミゲルにもわからないではなかった。

しかし。



なんで俺が睨まれなくちゃいけないんだよ。



*** next

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