望み−18


キラは女の子


「・・・感想は?」

「・・・訊くな」



クルーゼとともに退室した2人は、クルーゼの背を見送った後、ディアッカが先に口を開いた。

キラに会ったアスランがどんな顔をするのか?

それを楽しみにしていたイザークとディアッカだった。

しかし現実は、2人の想像を超えていたのである。



「あいつらの話、聞きたくない?」

「・・・・・・・・・今は、いい」



床を蹴ったイザークに続き、ディアッカも格納庫へ向かった。



「・・・・・・・・・そうだな」



同意しながらディアッカが横目に窺う。



あれ?

不機嫌?

なんでだ?



ディアッカからすれば、ありえないアスランの行動に動揺していたのは、イザークも同じだった。

それがどうして今、不機嫌に変わっているのか。



「あぁ・・・、どうかしたか?」

「なにがだ?」

「機嫌、悪いだろ?」

「ふんっ」



ふんって、おい。

否定するか、説明しろよ。



「もしかして、キラのことか?

 結構、気に入ってるみたいだったもんな。

 やっぱ、協力させるの反対?」

「違う!

 あ、いや、確かに賛成はしないが」

「そうだよな。

 とっくに協力してもらってるからなぁ。

 俺達が反対ってもな」

そりゃ、勝手ってもんだな。



「あ、でもキラを気に入ってるのは否定しないんだ?」

「お前だって、気に入ってるだろう?」



出会ってから数日しか経っていないが、すっかり甘えん坊と化したキラは、ミゲルをはじめ、イザークとディアッカにも満面の笑顔を向けてきていた。



「そりゃ、もう。

 かわいいからな、キラ」



軍に所属し、こうして戦場に身を置くのは自分で選んだこと。

任務以外では自由に出来るとはいえ、軍艦の中でほんとうにくつろげることなど、無い。

そんな彼らが、キラと在ると、心が安らぐのだ。



「不思議だよな。

 ミゲルは弟がいるから、ガキの扱いに慣れてるが・・・

 お前だって、子供っぽいのはあんまり好きじゃなかったろう?」

ニコルのこと、馬鹿にしてたもんな。

・・・俺もだけどよ。



「しかし、まぁ、変われば変わるもんだな。

 見たか、イザーク?

 あいつ、ミゲルのこと睨んでいたぞ」

キラの片想いってわけじゃなかったんだな。



キラの腕を外したら睨むのを止めたんだから、そういうことだろう。

キラは失恋で泣かなくて済みそうだった。



「イザーク、今度対決したくなったら、キラが使えるな」



黙ったままのイザークがつまらなくて、ディアッカはいたずらっぽく言う。



「アスランの前でキラを甘えさせてやれば、さぞ本気を出すんじゃないか?」



それで、イザークが勝てるかはわからんが。



心の中で思ったことは口に出さず、イザークを窺った。

案の定、イザークはその気になっている。



「その手があるか」



あ、そうか!



不機嫌さの消えたイザークに、ディアッカはなんとなくその理由に思い至った。



ディアッカもだが、イザークはアスランの澄まし顔がとにかく不快だったのである。

そのアスランが、キラを前に、突如として人間らしい表情を浮かべていた。

必死に挑む自分を、簡単にあしらっているように見えるアスランが気に入らない。

だが、自分以外に対して、大きく感情を動かした事実が、イザークを不機嫌にしていたのだろう。

負かしたところで、悔しがらせなければ意味がないのだ。

イザークには。

一転、楽しそうなイザークに、ディアッカは釘を刺すが・・・

「ま、やりすぎてキラを悲しませない程度にな」

「当たり前だ」



あー、ちょっと乗せすぎたか?

ま、キラはアスランがいれば、幸せだろうから、いいか。



これからしばらく楽しく過ごせそうだと、ディアッカも笑みを浮かべる。



*** next

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