望み−17


キラは女の子


「アスラン・ザラ!」

「・・・はっ!」



命令調の呼びかけに、アスランはバッと向き直って敬礼をする。

さすがに訓練されているだけあり、クルーゼの声に反応したのだ。



・・・えっと。

お、落ち着かなくちゃ。



やっと解放されたキラは、驚きやら緊張やらで乱れた息を整える。

そして改めて、目の前に背を向けて立つアスランに目をやった。



ほんとに、アスランに会えたんだ・・・。

みんなの話だと、アスラン、変わっちゃったかと思ったのに。

変わってないじゃない。

・・・かっこよくなってるけどっ///



実のところ、あまりよくアスランを見られなかったキラである。

それでも、その姿はしっかりチェックしていた。



やっぱり、今も綺麗。

イザークさんも綺麗だけどっ。

アスランのが素敵よねっ。



イザーク達に依ると、アスランは感情表現が少ないということだったが・・・

アスランのキラへ向けた笑顔は、ほんとうにキラとの再会の喜びに溢れていた。

思い出したキラは、にこにこと、笑みを浮かべる。



いいかな?

いいよね?



嬉しくて、キラはそっとアスランの腕に、腕を絡ませた。

そうしてから、アスランの顔を見上げる。



・・・こっち、見てくれない。



正面を見たままのアスランに、キラはその視線の先を見て・・・

笑顔が固まってしまった。



「噂どおり、変わったお嬢さんのようだね、ミゲル」

「・・・はい。

 キラ、こちらがクルーゼ隊長だ。

 ・・・キラ?」

「隊長さんは、なんで仮面を付けてるんですか?」

「「「「キラ!」」」」



咎めるように名前を呼ばれ、キラはびくっとして見回した後、ミゲルに目を向ける。



「な、何?」

悪いこと、した?



「くくくっ、かまわんよ。

 いや、君が疑問に思うのは当然だからね」



戸惑うキラに答えようとしたミゲルを遮るように、クルーゼが愉快そうに口を開いた。



「だが、プライベートな事情でね。

 これは、気にしないでくれると助かるよ」

「いつも、それを?」

「ああ。

 この艦に、私の素顔を知る人間はいないだろうね。

 ・・・好奇心は、抑えてくれるかね?」



最後の一言は、聞いた途端に輝いたキラの瞳に気づいた所為である。



「はい」



素直に応じたキラだが、そこに含まれた残念そうな響きは聞いていた全員が感じた。



「それで、君の希望を聞こうか」

「希望?」

「・・・やはり、聞いていなかったのかね?」

「・・・すみません///」



キラがアスランの背を見ながら考えているうちに、話が進んでいたらしい。

キラは赤面して、クルーゼに謝った。



「今、我々は地球軍の艦を追っているのだが、それは聞いているかね?」

「あ、はい。

 ミゲルさんたちから聞きました。

 当分、寄港予定は無いとも」

「そうだ。

 それで、君の処遇に困っているのだよ」

「私?」



ヘリオポリスに帰されちゃうの?



キラはアスランの顔を見上げると、アスランもキラを見ていた。

優しく、微笑んでいる。



アスランと、離れたくないっ。



キラは組んだ腕に力を込め、正面に立つクルーゼに目を戻した。

そのキラの様子から、キラの気持ちが読みとれたクルーゼは、フッと笑みを浮かべる。



「しばらく、ここに滞在することに、異存は無さそうだな」

「いても、いいんですか!?」

「そうだね。

 ただ、これは軍艦なのでね。

 あまり民間人を自由にさせておくわけにもいかない。

 君が、我々に協力してくれれば、問題はないのだがな」

「私に、出来ることならやります!」



聞いていたアスランとミゲルが、止める暇も無いくらい、即答だった。



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