望み−15


キラは女の子


「すみません、アスラン。

 僕がうまく動けなくて・・・」



ブリッツから降りたニコルは、珍しく悔しさを顔に出していた。

対するアスランは、内心を隠し、穏やかにニコルへと首を振る。



「いや、俺も同じだ。

 お互い、まだこの機体をいかせていなかったな」



まさか、いまさらイザークに遅れをとるとは思わなかった・・・



「でも、イザークとディアッカの機体はよく動いてましたよね」

「そうだな」



いったい何が違った?



「で、これは聞いた話なんですけど。

 ガモフに、プログラミングの専門家がいるって言うんですよ」

「プログラム?」

「ええ。

 負け惜しみになりますけど・・・

 あちらの2機はシステムの完成度が高いんでしょうね」

なにしろ、ほとんど一から構築したようなものですから。



アスランとニコルはパイロット待機室で軍服へと着替え終え、艦橋へ向かった。



「それで、この後その人がヴェサリウスに来るそうです。

 今の戦闘の結果からすれば、ブリッツとイージスのシステムも書き換えですね」



楽しみです、と、もう気持ちを切り替えたのか、ニコルは晴れやかに笑う。

しかし、アスランはニコルへ頷いて見せながらも・・・



次は必ず勝つ!



決して面には出さないが、実のところアスランもイザークと同様、負けず嫌いなのだ。



***



「緊張してるみたいだな」

「もちろんですっ」



キラの顔は、どこからどう見ても強ばっている。



「だって、久しぶりにアスランに会うんですもんっ」

「・・・幼なじみだろ?」

「そうですよ?」

「今さらだろうに」

「甘いっ。甘いですよ。

 だって、3年です。

 ・・・アスランが変わっていないとは限らないし」



キラとミゲルはイザークとディアッカの背を見ながら、ヴェサリウスの通路をミーティングルームへと進んでいた。

期待と不安に心を揺らすキラは、甘えるようにミゲルの腕に・・・ぶらさがっている。

ミゲルもそんなキラの好きにさせていた。



「キラのアスランは、たった3年でキラを忘れるような奴だったか?」

「そんなこと!」



ありえない、と大きく首を振るキラに、ミゲルは安心させるように微笑みを向ける。



「だろ?

 なら、そんなに不安がるなよ」

「・・・うん」

 

アスランが私を忘れるとは思わないけど。

今のアスランが、私のことをどう思っているかは気になるのっ。

好き、なんだもんっっ。

・・・アスランに、好きな人ができてたら、どうしよう。

あの頃は、アスランの一番傍に、私がいたから。

でも、プラントでは?



それでも、キラはアスランに会いたい気持ちの方が大きかった。

だから、ここにいる。



***



キラは胸をドキドキさせながら、アスランが振り返るを見ていた。

藍色の髪を翻し、こちらを向いたアスランの目が見開かれる。



「キ・・・ラ・・・?」

「アスラン・・・」



ミゲルに引かれ、アスランの横まで着いたキラは、アスランを見上げて泣き笑いを浮かべた。



「よかった、本物だ・・・」



もちろん、名前を聞いて、本人だとわかってはいたけれど。

こうして目の前にして、やっと再会できた喜びで胸がいっぱいになってしまった。



「キラ、ほんとに君なのか!」



予想し得ぬ再会に呆然としていたアスランは、やっと思考が戻る。

そしてその目は、キラではなく、ミゲルへと向かう。



「キ、キラっ。腕を放せ、ほらっ」



アスランに突然睨まれ、ビクッとしたミゲルは、すぐにその理由に気づき、キラを即した。



こ、怖いぞ、アスランっっっ。

キラ、早く放せっ。



よくわからないながらも、ミゲルに言われたとおり、組んでいた腕を解く。

と、次の瞬間・・・



キラはアスランの腕の中だった。



*** next

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