望み−14


キラは女の子


「ミゲルさんは参加しないんですか?」

「そりゃな。

 俺がストライクに乗ると決まったわけじゃないんでな」

「・・・違うんですか?」



既にイザークとディアッカは、モビルスーツで出ている。

キラはミゲルと共に、ガモフの艦橋でまたも観戦だった。



「俺には、ジンを改良した愛機があるんだよ。

 今、ちょっと修理中でな。

 俺に合わせてあるだけに、使い易いんだ。

 まぁ、ストライクの機体性能も捨てがたいんだがなぁ。

 って、それより、アスランのこと、いいのか?」

「今は、いいです。

 ちょっと、心の準備をする時間が欲しいし」

「・・・あいつらの言ったこと、まだ気にしてるのか」

「そんなわけじゃ・・・」

なくもないんだけど。



口では否定しながら、しかしキラの顔はそれを裏切っている。



やはり、ヴェサリウスにアスランがいると知って。

キラはイザークたちに彼のことを聞いてみた。

そうすれば、アスランが変わっていないことを。

キラが大好きだったアスランと変わっていないことを確認できると思って。

しかし結果は、キラの不安を煽るだけだった。



「あいつらも、なぁ・・・」



ミゲルは、今ここにいない後輩2人を思い浮かべ、ため息を吐く。

キラの様子を見れば、彼女にとってアスランが特別な存在なのは一目瞭然だった。



イザークもディアッカも、わかったよな。

いつもの悪口は出なかったし。



それでも、彼らの言葉の端々に、アスランを嫌う感情が見えていた。

キラに、キラの知るアスランとは違った印象を与えるだろう程に。



俺にしたって、今のアスランからキラの言うアスランが想像しきれないからな。



「アスラン、戦争なんか嫌っていたのに・・・」



既に何度も聞いたキラの呟きに、ミゲルは苦笑を浮かべるしかない。

キラには言わないが、ミゲルはアスランに起きたことを知っていた。

いや、その出自が故に、プラントでは知れ渡っている。

アスランの母が、地球軍の核により死亡したことを。



それだけが、志願の理由とは限らないが・・・



「言っただろう、好きで戦争する奴は滅多にいない。

 会って、直接聞いてみるといい。

 奴が、好きなんだろう?」

「え・・・///」



唐突に図星を指され、心構えの出来ていなかったキラは、一気に真っ赤になった。



「あ、その、えっと・・・///」

「いい、いい。

 その顔で否定しても意味ないから」

「ミゲルさんっ。

 からかわないでよっ」

「あははっ。

 まぁ、さ。

 キラの好きに奴だろ?

 信じてみろよ、な?」

「・・・うん。そうですよね」



会話をする2人の見つめる先で、2対2の模擬戦闘が開始された。



***



「勝った、な」

「え!?どっちがですか!?」



知識も経験も無いキラには、なにがなにやら・・・



「どっちって・・・、イザークとディアッカがだよ」

「アスラン、負けちゃったんだ・・・」

「そう、キラのお陰かな」

「私の?」

「まぁ、1対1じゃないからな。

 一概には言えないが。

 今まで、イザークがアスランに勝ったことは無かったんだ。

 それで、あいつはアスランが嫌いなんだよ。

 負けず嫌いでね」

困ったもんだ、ほんと。



「アスラン、優秀なんだ、やっぱり。

 でも、私のって?」

「いつもと違う条件の一つに、キラのOSがあるだろう。

 あっちの2機にはそれがない。

 キラには実感ないだろうが、OSの差は結構でかい」

もちろん、パイロットの技量は絶対条件だがな。



話ながら、ミゲルはキラを連れて艦橋を出る。

これから、ガモフからヴェサリウスへと行くのだ。



「キラを見たあいつがどんな顔するのか楽しみだな」

「ミゲルさん、悪趣味かも」

「いやぁ、きっとイザークとディアッカもそう思ってるぞ」

「・・・」



・・・見せ物でも玩具でもないんだけどな。



キラはこっそり、ため息を漏らした。



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