望み−13


キラは女の子


「何、気にしてる?」

「ミゲルさん・・・」



今の今まで、楽しそうにしていたキラの変化に、ミゲルがいち早く気が付いた。

キラに顔を寄せ、優しく訊く。



「良くできていたぞ。

 イザークに負けたが、満足のいく内容だった」

「あ、うん。

 私も、昨日と違って上手くいったと思う・・・」

「まぁ、後はパイロットの技量と経験ってわけだ。

 言って置くが、俺の腕がイザークに劣るってわけじゃないぞ?」



戯けたように言うミゲルに、キラもぎこちなく笑った。

そんなキラに、ミゲルは一転、眉を寄せる。



「どうした、キラ?

 おかしいぞ。

 気になることがあるなら、言ってみな」



キラは思い切って、はっきりさせてみようと思った。



アスランがもしあっちに乗ってるなら。

そして私の名前を聞いたなら。

今まで何も言ってこないわけは無いもん。

ずっと。

ずっと一緒だったんだから。

例えば、アスランが私の知る彼と違ってしまっていても。



何のリアクションも無いのは、おかしいと思う。

ならば考えられるのは、二つ。



キラがここにいることを知らない。

もしくは、あれはやはりアスランではないからか。



「・・・あちらの艦には、私のこと伝わってるのかな?」



民間人を保護した。

それだけのことに、いちいち名前まで公表されることはないだろう。

しかし、この状況なら。

ザフト軍に協力していることになる今。

少なくとも、あっちにいるというミゲル達の隊長へは連絡されているはず。

そう思うキラに、ミゲルもあっさりと頷いた。



「当たり前だろう。

 キラは民間人なんだからな。

 隊長に内緒ってわけにはいかない」

「・・・パイロットの人は?

 私の名前、聞いてるかな?」

「パイロット?

 あ・・・と、あいつらは、どうかな。

 まぁ、キラの名前までは、知らないかもしれない。

 俺も、出来るだけ内密に、って隊長に頼んだから」

「内密?」

「キラが俺達に協力できるのは、ここまでだろう?

 放っておくと、とことん協力させられちまうかもしれないからな。

 情報は抑えておくに限る。

 って、あいつらがどうかしたか?

 いい奴らだぞ。

 こいつらより、礼儀正しいし、扱いやすいし」



言いながら、ミゲルは傍らのイザークとディアッカとを示す。



「おい、そりゃひでぇぞ、ミゲル!?」

「事実だろうが」



くってかかるディアッカに、ミゲルはしれっと返した。



「イザークは、すぐにアスランと対決したがるからなぁ。

 負けず嫌いは嫌いじゃないが、ちょっと迷惑だぞ」

「アス、ラン?」

「そう。

 あっちにいる、こいつらの同期なんだがな。

 これがまた、優秀っていうか、優等生で。

 なにかというと、イザークが・・・、って、キラ?」



キラはアスランの名を聞いた瞬間から、話を聞いていない。



アスラン!

やっぱり、アスランなの!?



「アスランって言うんですか、あの人?」

「あの人?

 キラ、会ったこと、無いよな?」

「モルゲンレーテで、赤いモビルスーツに乗り込むのを見ました。

 アスランって、もしかしてアスラン・ザラって言いませんか?」



興奮した様子のキラに詰め寄られ、さらに発せられたその言葉にミゲルは驚いた。



「知ってる、のか?

 もしかして、知り合い?」

「やっぱり、アスランなんですね!?」

「あ、おい・・・っ」



力が抜けたキラの体が流されそうになるのを、寸ででミゲルが止める。



「幼なじみ、なんです。

 ずっと、音信不通だったから・・・」

「そうか・・・。

 どうした、大丈夫か?」

「え?・・・あれ?」



キラの瞳から、知らず、涙が溢れていた。

そんなキラを、イザークとディアッカは複雑そうな目で見る。



「あいつの、幼なじみだと?」



*** next

Top
Novel


Counter