望み−11


キラは女の子


「キラ、なにを・・・」

「ごめんなさい・・・っ」

「何を言ってるんだ・・・?」



泣きながら謝るキラの頭にミゲルは手を載せ、顔を寄せた。



「キラ、頼むから、泣き止んでくれないかな?

 理由がわからないまま謝られても、困るんだよ?」

 ・・・ね?」



優しく言われ、キラはゆっくりと瞼を上げる。

泣いているせいか興奮したせいか、その瞳は赤くなっていた。

上目遣いに見上げてくるその様子に、ミゲルは自分の幼い弟を思い出してしまう。



あいつもよく、いたずらした後、こんな顔してたよなぁ。

悪いことをしたと思っていて。

謝りながら・・・



「キラは俺のこと、好きかな?」

「・・・うん、好きよ」

「俺も、キラのこと好きだよ。

 だから、ね。

 キラが何を謝ってるのか知らないけど。

 こうして謝るキラを、俺は嫌いになったりしない」

「・・・ほんと?」

「信じられない?」

「う、ううんっ」



首を横に振ったキラは、はっと気づいたように手の甲で目元を擦り始めた。

泣き顔を晒していたことが恥ずかしくて、ちょっと乱暴に。



「落ち着いた?」

「うん」



今度こそ、ちゃんと説明しようと口を開こうとしたキラを、だがイザークの声が遮る。



「2人とも、ここがどこかわかってるのか?

 話をするための場所じゃないぞ。

 他でやれ」



咎めるような言葉だが、その口調や声に刺はない。



「ああ、そうだな」



ミゲルはキラを連れて移動した。



***



「んじゃあ、ほんとにあれ、キラがやったって?」

「そうらしい。

 ・・・ああ、どうしたもんかなぁぁぁ」



キラから聞いた話を、ミゲルはイザークとディアッカにだけ話して聞かせた。



キラの巻き込まれた状況。

咄嗟にストライクの操縦を、地球軍士官から奪った理由。

そして、キラがそのOSを書き換えた事。

・・・戦闘中に。



もちろん、本当なら隊長にすぐに報告すべきなのだろうが。



「このまま話したら、キラが泣くことになっちまうかもしれん」

「黙っておけばいいじゃんか」



頭を抱えたミゲルに、ディアッカはあっさりと返す。

その彼に、イザークは呆れた目を向けた。



「それで済む話か?

 本人に協力するか決めさせてやってはどうだ、ミゲル?」

「本人って・・・」

「イザーク、あの泣いてるのをまた見たいのかよ?」

「・・・勘違いしてないか?

 確かに、あれは小さな子供のように泣いていたがな。

 それでも、俺たちより一つ下なだけだぞ。

 なんであれ、本人の意思を無視するもんじゃないと思うがな。

 そういうことは、話したのか?」

「あ、いや・・・

 そうか、そうだな。

 うん、そうしようか」

「ミゲルまで!?」

「うるさいぞ、ディアッカ」



***



「私が、協力ですか?」

「もちろん、無理にとは言わない」



キラは自身を囲む3人の顔を順番に見つめた。

そして、イザークとディアッカへ聞きたかったことを口にする。



「あの、怒ってませんか?」



ミゲルには、話をしたときに逆に慰められてしまった。

そもそも、きっかけを作ったのは自分たちの方だから、気にするなと。



「怒りゃしないよ」

「その時、必要なことをしただけだろう。

 自分や誰かの身を守ろうと、な。

 後ろめたく思っているようだが、それよりミゲルを励ましてやったらどうだ?」

「え?」



イザークが軽く言った言葉の意味が分からず、不思議そうに見返す。

ディアッカは、逆によくわかり、思わず吹き出してしまった。



「くっ、・・・くっくっ、あははっ」

「素人のキラに負けた、優秀なパイロットにな」



答えをもらい、キラは視線の先に、顔を赤らめたミゲルを捉えた。



*** next

Top
Novel


Counter