望み−9


キラは女の子


「すごい、広いですね・・・」



格納庫に着いたキラは、困惑したように呟いた。



「来た時も見ただろ?」

「ん・・・でも、よく見てなかったから。

 こんなに広いと、うっかりすると延々流されちゃいそう・・・。

 みんな、よくあんなに動き回れますよね?」

「・・・・・・・・・あのなぁ」



キラは素直な気持ちを呟いただけなのに、ディアッカにため息を吐かれる。



「なんですか?」

「俺達をなんだと思ってるんだ?」

「なに、って・・・」

「軍人。

 俺達は軍人なの。

 それなりに訓練を受けてるの。

 無重力空間で満足に動けないような奴がいるわけないだろう?」

「あ・・・///」



畳み込むように言われ、キラも自分が間の抜けた事を言ったと気づき、赤面した。



「そ、そうでした・・・///」

「それに、俺達はプラント育ちだからな。

 軍人でなくても、学校の授業でそういう訓練を受けている」

「・・・そっか」



キラも生まれ育ちは宇宙なのだが・・・

月もヘリオポリスも、その教育はナチュラル向けのものが基本だ。

だから、キラ自身はまだ無重力に慣れていない。

なんとか、艦内の移動は出来るようになっているが。



「おいっ!」

「きゃあっ!」



ディアッカと向き合って話していたキラは、背後からの声にびっくりして飛び上がった。

・・・文字通り。



「あ、おいっ」

「・・・なにやってる」



つい、床を蹴ってしまったキラは、格納庫の中へ飛び出してしまう。

それに焦ったディアッカが手を伸ばすが、届かない。

流されていきそうになったキラを止めたのは、イザークだった。

こちらに近づきつつあった彼は、途中でキラを捕まえる。



「お、サンキュー、イザーク」

「す、すみません。イザークさん」



一瞬ひやっとしたディアッカとキラは、イザークに礼を言った。



「気を付けろ」

「はい。ありがとうございました」



イザークによって元の場所に戻されたキラは、間近にある美貌にしばし見とれる。

それというのも、イザークはキラを放した途端ディアッカと話をし始めて、暇だったのだ。



「どこに行っていた?」

「飯。言っただろ?」

「呼び出しが聞こえなかったのか?」

「は!?」



ディアッカは慌ててポケットを探る。

見つけだした通信機を確認して、イザークに向き直った。



「悪い」

「緊急でなくて、良かったな」

「もしかして、ミゲルが呼ばれたのと一緒か?」

「そうだ。

 ・・・それは知ってるのか?」

「キラが言ってた。

 なぁ、キラ?」

「は、はい。ええ、ミゲルさんのことは・・・」

「ああ、いい。

 で、何をしに来たんだ?

 ここには、見て楽しいものなんか無いぞ」

「あ、えっと・・・」



果たして、本当のことを言って良いのだろうか?

迷ったキラは、ディアッカに、目で助けを求める。



「軍艦なんて、珍しいらしいからな。

 今なら、見せてやれるかな、っとな」

「親切なことだな」

「ご、ごめんなさい」



不機嫌そうなイザークに、思わずキラは謝ってしまった。

それに、訝しそうにイザークが見返す。



「何を謝る?

 艦長の許可が出ているんだ。

 一人じゃなければ、構わない。

 モビルスーツを見たいのか?」

「特に、どれってわけじゃないんです」



ミゲルさんの仕事を見てみたかっただけだから。

イザークさんには内緒よね。



「じゃあ、お前が乗ってきたストライクのところに行くか。

 ミゲルも気晴らしになるだろうからな」

「気晴らし?」

「ちょっと問題が起きて、な。

 一緒に行けばわかる」



行くぞ、と言いながら差し出された手を、キラを握った。



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