望み−8


キラは女の子


「あれ?

 キラ、一人なのか?

 ミゲルは?」



食堂でキラが昼食をとっていると、トレーを持ったディアッカが近寄ってきた。

乗員達は交代で食事をするらしく、食堂はいつも人が疎らだ。

ディアッカは、空いているキラの正面に腰を下ろす。

キラはそれを見ながら口に入れたものを良く噛み、飲み込んでから口をひらいた。



「一緒に入り口まで来たんですけど・・・。

 呼び出しを受けて、行っちゃいました」



仕事は大事だろうけど、食べてからにすればいいのにな・・・



不満を表したつもりはないが、ディアッカに、にやっと笑われる。



「・・・何です?」

「いや、別に〜?」



にやにや笑いながら含むように答えられ、キラはあからさまにムッとした顔をした。



「ディアッカさん、感じ悪いなぁ」

「・・・・・・くくっ。

 ミゲルに構ってもらえなくて、拗ねてるんだろ」

「拗ねてなんて・・・」



図星を指され、キラは顔を赤らめてしまい、否定の言葉は意味がない。



「なぁ、俺にしない?」

「・・・・・・・・・何を?」



唐突なディアッカの言葉に、キラはしばしの沈黙の後、首を傾げた。

なんのことを言ったのか、まるでわからない。



「キラの世話係。

 暇さえあれば、キラはミゲルといるだろう?

 でも、ミゲルはいろいろ仕事が多いからな。

 俺なら、ミゲルより一緒にいられる時間が長いぞ」

「え、でも・・・。

 艦長さんに言われたんだから、勝手に変えられないでしょう?」

「そんなもん、大した問題じゃないな」

「で、でも・・・」



口ごもりながら、落ち着きを無くしているキラは、まるで言い訳を考えている子供のようで。

ディアッカは堪えていた笑いを爆発させた。



「あはははっ」

「ディ、ディアッカさん!?」

「あはは、わ、悪い・・・っ。

 いいよ、そんなに頑張って理由を作らなくても・・・。

 ミゲルがいいんなら、はっきりそう言えって。

 怒らないから」

「う・・・」

「ミゲルが好きなんだ?

 そういう意味で?」

「違いますっ!」

「ほんとに?」



笑いを残したまま話すディアッカは、明らかにキラをからかって楽しんでいる。

それにキラも気づき、気軽く返すことにした。



「どっちかっていうと・・・

 私の好みは、ミゲルさんよりイザークさんです」

「えーっ。

 俺のがいい男だぞ?

 あいつ、愛想悪いし。

 どこがいいんだ?」

「綺麗なところ」

「・・・確かに綺麗なことは認めるが、それから?」

「それだけ」

「面食い?」

「そうですよ〜」



もとより、半分冗談で話しているキラは、すっかり口が軽くなっている。

陽気なディアッカと話しているのは、楽しかった。



「私の幼なじみが、とっても綺麗なんです。

 3年前に別れたきりですけど・・・

 絶対、イザークさんと同じくらい綺麗になってると思うんです」

「そいつが、キラの本命?」

「もちろん。

 この・・・」



キラは肩に留まっているトリィを指し示す。



「トリィは彼にもらったんです」

「で、いつも一緒、と?」

「そうです」



嬉しそうにトリィを見つめるキラを見て、ディアッカは肩を竦めた。



「はい、はい。

 ごちそうさま。

 さて、食い終わったんなら、ミゲルのとこへ行ってみるか?」



キラより後から食べ始めたはずのディアッカは、しゃべりながらもあっというまに食べ終えている。



「いいんですか?

 仕事なんですよね?」

「平気、平気。

 どうせ、格納庫の整備士から呼ばれたんだろうよ。

 行こうぜ」

「あ、はい」



実は気になっていたキラは、その誘いに笑顔で答えた。



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