望み−7


キラは女の子


「・・・ラン?」

「!」



呼び声に、勢いよく頭を上げたアスランは、そこに同僚のニコルを見とめて肩を落とした。

そして周りを見回して、自分がモビルスーツのコックピットにいることを思い出す。

地球軍から奪取したイージス。

ニコルはその開いたハッチから覗き込んでいた。



普段、感情を表に出さないアスランの、明らかに気落ちした様子に、ニコルは心配そうに声を掛ける。



「あ・・・、と、・・・なにかありました?」

「ああ、・・・いや、なんでもない」



自分の考えに沈んでいたアスランは、ニコルの声を別の人間と勘違いしただけだった。

似ているわけではない。

ただ、その相手のことばかり考えていたので・・・。



アスランは小さく首を振り、ニコルを見上げる。



「それで、何かあったのか、ニコル?」



先ほどニコルを振り仰いだアスランの顔には、動揺が浮いていた。

しかし、既にそれは隠されている。

いつもと変わらぬアスランに、ニコルはふと、寂しく感じた。



何を悩んでいるのか知りませんが・・・

僕じゃ、頼りになりませんか?



口に出して訊いてみたいが、おそらく否定されるだけだろうとニコルは思う。



作業中に考え事なんて、今までの彼なら考えられない。

彼はいつだって、完璧だ。

それで、イザークもつっかかるのだろうから。

だけど、今のアスランは・・・



「ニコル?」

「あ、ああ。

 作業は済みましたか?」

「だいたい、今すぐできることは、な。

 システムは相当書き換える必要がありそうだ」

「そうですね。

 僕の方も同じです。

 地球軍は、あんなOSでモビルスーツを機動させるつもりだったんでしょうか?」

「まだ、開発段階なんだろう。

 しかし、ソフト面はともかく、ハード面はなかなか凄いな」



話をしながら、アスランはイージスの電源を落とし、コックピットを出た。

ニコルと共に、格納庫を出るべく移動する。



「ええ。

 どの機体も、それぞれに特徴があるようですよ。

 フェイズシフト装甲は共通していますから・・・

 エネルギーの消耗が激しそうですけど」



遠ざかりながら、ニコルは並べられたモビルスーツを振り返った。



「シルエットもまるで違いますね。

 特にアスランの乗っていた・・・何と言いましたっけ?」

「イージス」

「そうそう、イージス。

 イージスは、かなり異質な感じを受けますよ」

「あれは、モビルアーマーに可変する。

 そのせいだろう」

「へぇ・・・」



2人は、パイロット待機室に入り、パイロットスーツから軍服に手早く着替える。

アスランはロッカーを閉め、気になっていたことをニコルに聞いてみた。



「ニコル、ミゲルはどうしたか聞いているか?」

「あ!・・・僕、それをアスランに話したかったんですよ。

 驚いたことに、ミゲルがジンを失ったって」

「・・・ミゲルが?まさか!?」

「アスランもそう思うでしょう?

 あのミゲルが、地球軍相手に遅れをとることがあるとは思いませんでしたよ」



アスランより先に帰還していたニコルは、当然作業も先に終えている。

余った時間に、僚艦ガモフから情報を得ていたらしい。



「でも、その後はさすがですよ。

 ほら、もう一機あったんでしょう?」

「ああ。情報が間違っていたらしい。

 全部で5機あったな」



その残り一機の傍に、キラがいた。

・・・いや。

あれが、キラのはずはない。

キラが、あんな場所にいるはずがないんだ。



「最後の一機を奪取して戻ったそうです。

 どうやら、その一機との戦闘でジンがやられたらしくて。

 ミゲルがモビルスーツ戦で勝てなかったのも不思議ですけど・・・

 その一機が、戦闘を出来たことが一番不思議ですね。

 それだけ、違うシステムを積んでいたんでしょうか?」

「そう、だな。

 いくらなんでも、あんな稚拙なOSでは・・・」



ミゲルが奪取した・・・

もしあれが、キラだったなら・・・

いや、止めよう。



アスランは、嫌な想像を振り払うように、話題を変えた。



「さぁ、隊長が報告を待っている。

 艦橋へ急ごう」



*** next

アスラン出たけど
出ただけ・・・
アスキラはいつ???
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