望み−6


キラは女の子


「じゃあ、俺は行くけど」

「はい。ありがとう、ミゲルさん」



部屋を出ていくミゲルに、キラは笑顔で手を振る。



ミゲルに連れられていった艦橋で、キラは艦長から滞在の許可を得た。

その後、居住区の説明を受けながら、キラが使う部屋へ。

戦闘行動の直後ということもあり、艦内はまだざわついている。

とりあえず、あまり動き回らなければ、自由に過ごして良いと言われた。



こんな艦に乗るのは初めてのキラは、改めて部屋の中を見回す。

月からヘリオポリスへの移動はシャトルだったので、こんな個室は物珍しかった。



「うーん。どうしようかな?」



自由に、といっても、特にやれることがあるわけでもない。

ベットに腰掛けたキラは、そのままポフッと後ろに倒れ込んだ。

が・・・



「わっ・・・、っと危な・・・」



部屋の中の重力は、1Gよりもかなり小さめに設定してあるらしい。

倒れた勢いのまま、体が浮きそうになって、キラは慌ててベットにしがみついた。



「う・・・、失敗」



もう一度、今度はそっと横たわる。

天井を見上げ、その視界を遮るように両手を上げた。

その手を、じっと見つめる。

手に、何かあるわけじゃなかった。

ただ・・・、思い出す。



「私が、ミゲルさんの邪魔をしたんだよね・・・」



あの時は、夢中だった。

まるで状況が飲み込めないまま、キラの同乗したストライクが、ジンと戦闘になった。

しかし、あの地球軍の女性は満足に操縦できなくて。

・・・OSの不備も大きい理由だけど。

フェイズシフト装甲のお陰で、防御はまぁ、問題なかった。

ただ、操りきれずに、足下の人を踏みそうになっていたのだ。

そんなのを、見過ごすことができるはずない。

結果、キラは手を出さずにはいられなかった・・・。



「あのジンが、ミゲルさんの機体だったはずだから」



今のキラは、あの時、動けなくなったジンをミゲルが自爆させたことに気づいている。

キラが、ミゲルに自機を喪わせたということを。



嫌われたくないな。

でも、黙っているのも・・・。

先に、謝っちゃった方がいいかな?



正直に言えば、ミゲルは許してくれるような気がした。

だが、さっきの2人や他の人達はどうだろうかと思う。



「イザークさんは、怒りそう・・・」



キラは、はぁっ、と大きく息を吐き、腕を下ろしてゆっくりと起きあがった。



今、考えるのは止めとこ・・・



思考がどんどん暗くなっていきそうなので、さっさと頭を切り換える。

服の中に入れておいた物を取り出した。



「壊れてないかな?」



両の手の中に収まるサイズの緑色の小鳥。

マイクロユニットのロボット鳥である。

キラが最初にストライクに乗る際に切った電源を入れた。



パサッ



トリィ



キラの手の中から飛び立ったトリィは、いつものようにキラの肩へと留まる。



「トリィ・・・」



トリィ トリィ



パサッ



再び翼を広げ、キラの差し出した指先に飛び移ってきた。



「よかった、無事だったね」



首を傾げるトリィに、キラの顔が綻ぶ。

大好きなアスランにもらった、大事なトリィ。

あの衝撃で壊れしまわなくてよかったと、キラは胸をなで下ろした。

そして、いつものようにトリィに話しかける。



「トリィ、私達、今ザフトの艦に乗ってるのよ。

 飛んで行っちゃっわないでね。

 ・・・トリィはアスランを憶えてる?

 憶えてるよね、トリィを作ってくれた人」



トリィには言葉を理解する能力は付いていない。

当然キラの話も通じないので、トリィは首を傾げたり、羽ばたいたりするばかりだ。

それでもキラは、どうしても言いたい。



「私ね、アスランに会ったのかもしれないの。

 もしかしたら、もう一つの艦にいるの。

 ・・・会えるかな?」



*** next

アスランがいなくて寂しいのですが
2人の再会は、とーぶん先・・・
なので、次の話はアスランのとこにしようかなと思います
アスキラが遠いですね(T-T)
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