偽り−41


キラは女の子


「ちょっと、なんでキラだけ帰れないのよ!?」



ガモフとヴェサリウスは、本国を目前にして、オーブ艦と合流を果たした。

もちろん、オーブの民間人を迎えにきたのだ。

やっと家族に会える!

そう喜んだミリアリアとトールは、キラがこのままプラントに行くと告げられ、目を吊り上げた。



「いや、俺に聞かれてもな」

「変じゃないのよっ。

 私達が帰れて、キラだけなんて。

 ・・・まさか、やっぱりストライクのせいなの?」

「えっ、だってそれはもう、決着ついたんだろ?」

「だから、な。

 落ち着けって、お前ら」



ああ、やっぱりニコルにでも押しつけりゃよかったぜ・・・



たまたま手の空いたディアッカが伝言を引き受けただけで、事情など聞いていない。

こんな風にミリアリアに詰め寄られても、ディアッカとて困るのだ。

だいたい、疑問に思ったのは自分も同じである。



「ミリィ、トール。

 ディアッカさんを困らせないでよ」

「「キラ!」」



くすくすと笑いながら、キラが入室したきた。

きっと、ミリアリアはキラのために怒るだろうな、と思っていたのだ。

だから、ぎりぎりまで秘密にした。



「僕の希望でもあるんだよ」

「・・・どういうこと?」

「僕はもう、アスランと別れたくないんだ」

「だって、ご両親は待ってるわよ?」

「・・・うん。それは考えたよ。

 でも、ね・・・。

 プラントからオーブへは行かれても、逆はできないから」



キラと目を合わせたミリアリアに、キラの決意が伝わってくる。

それでも、ミリアリアは確認せずにいられない。



「私達とも、会えなくなるのよ?」

「うん。そうだね」

「家族や、友達全員より、アスランさんをとるのね、キラは?」

「うん。・・・ごめんね」

「・・・いいわよ。わかってたもん。

 キラは、ずっとあの人のことばっかりだったもんね」

「ああ・・・、まぁな。

 ほら、ミリィ。泣き止めって。

 こうなるかも、ってミリィも言っただろ?」

「でも、実現は難しいとも言ったわよっ」



取りなそうとするトールにまで、ミリアリアはつっかかった。

いくら予想していても、別れを実感するのは別なのだ。



「カガリがね、手回しをしてくれたんだ。

 あの隊長さんと話をして。

 僕が困らずにプラントに行けるように、って」

「カガリが!?」

「ちょっと、カガリには相談していたの、キラ!?」

「ち、違うよ、ミリィ。

 それは誤解。

 カガリが訊いてきたんだよ、僕に。

 残りたいか、ってね」



それなりに親しく付き合ってきた自分より、カガリのが近しいのかと、ミリアリアはショックを受けて、思わず涙ぐむ。

慌てたキラは、すぐさま否定した。

と、いつの間にか入ってきたカガリが、口をはさむ。



「お前達は、私が巻き込んだんだ。

 なら、出来る限りの希望を叶えるのが当然だろう。

 特にキラは、微妙な立場でもあるしな。

 キラがオーブへの帰国を望むならそれでいい。

 だが、違うなら・・・」



***



「キラ、元気でね・・・っ」

「ミリィこそ」



別れを前に、キラとミリアリアは、きつく抱きしめ合った。



「アスランさんと、幸せになるのよ」

「ミ、ミリィ・・・」

「今更、否定しないでね。

 女の子が優先するのは、いつだって恋なのよ。

 キラはね、恋しているの。

 いい、絶対手放しちゃダメだからね!」

「・・・・・・・・・うん。

 ミリィも、トールと幸せにね」

「もちろんよ。

 また、会いましょうね」

「戦争が終わったら、会いに行くよ。

 アスランと一緒に」

「待ってるわ」



抱擁を解いたミリアリアは、次の瞬間、キラを突き飛ばした。

・・・キラの後ろに立つ、アスランに向けて。

咄嗟に対応しきれなかったキラは、アスランに優しく抱き留められた。



「アスランさん、キラを幸せにしてよね。

 ずっと、辛い思いをしてたんだから。

 泣かせたら、許さないからねっ」



わざと、険のある声を出すミリアリアに、アスランは微笑む。



「言われるまでもないな。

 キラの幸せが、俺の幸せなんだからな」

なぁ、キラ。



ぬけぬけと言うアスランに、ミリアリアは呆れた視線を向けた。

そして、キラに目を移し、その目を見開く。



「キラったら、真っ赤・・・。

 はいはい。ほんとに余計なお世話だったみたいね。

 いこ、トール」



ミリアリアはあっさりと背を向けた。

すぐ後ろにいたトールの腕を引き、シャトルへと歩く。

その入り口で立ち止まり、一拍置いて振り返った。



「キラ!約束よ!

 絶対、会いに来るのよ!」



アスランの腕の中で、ミリアリアの背を見ながら涙ぐんでいたキラは、はっとして涙を拭う。

寂しさを抑えて、笑顔でミリアリアに答えた。



「アスランと、必ず行く!」



***



「後悔、してない?」

「しないよ。

 僕はアスランと同じところにいたいんだ」

「軍に協力しなくてはならなくても?」

「ちゃんと、条件つけたから。

 アスランが軍にいるなら、僕も。

 早く、戦争を終わらせなくちゃね」

「ああ。

 ・・・愛しているよ、キラ」

「・・・・・・・・・僕も///」



***end

Top
Novel


Counter