偽り−40


キラは女の子


「それで・・・、私はキラさんに会うためだけにここに来たのかしら?」



マリューは胸にしがみつくキラの頭を撫でながら、自分達を見つめる4対の瞳に訊いた。



「そうですよ。

 キラが、皆さんを心配して落ち着かない様子なので。

 やっと隊長の許可が下りたんです」

「そう・・・」



マリューは、その少年が、キラを愛しげに見つめているのに気づく。



「それで、皆さんはどなたなのかしら?

 私のことは、もちろんご存じよね?」

「あ、そうだった」



マリューの言葉に反応したのは、キラだった。



そうだ、みんなを紹介するつもりだったんだっけ。



「あの、この4人は。

 ・・・Gのパイロットです。

 マリューさんは会いたくないかもとも思ったんですけど」

「そう・・・」



マリューの想像していた通りの答えである。

人数といい、紅の軍服といい。

ただ不思議なのは、彼らはキラに好意を持っているらしいことだ。

キラ自身は不本意だったとはいえ、彼らはキラと剣を交えている。

キラの立場を理解してくれたということだろうか?



「あちらから、イザーク・ジュールさん。

 ディアッカ・エルスマンさん。

 ニコル・アマルフィさん。

 そして、アスラン・ザラ。

 彼は、僕の・・・幼なじみです」

「幼なじみ・・・?」



あまりにも意外な言葉に、マリューは呆然とした。

そして、一気に血の気がひく。



キラさんと、ザフトのパイロットが幼なじみ?



「幼なじみじゃなくて、恋人だろう?」

「ち、ちが・・・っ」



恋人、の一言でキラは赤い顔をして首をぶんぶん振った。



「ちょっと、ディアッカっ。

 茶化すんじゃないですよ。

 いくらほんとのことでも」

「なっ。まだ、違いますっ!」

「「まだ?」」



自分の言ったことが、ちゃんと否定になってないことに気づき、さらにキラが赤くなる。

それで、マリューにも彼らの言うことがほぼ正しいことがわかった。



私がしたことは・・・っ



民間人のキラに戦闘を強要した。

それだけでも、許されることではない。

それなのに・・・。

この2人が恋人だろうとなんだろうと。

互いに好意を持ち合っているのは確か。

そんな2人に、マリューは殺し合いをさせていたのだ。



「キラさんは、いつその彼がパイロットだと知ったの?」

「・・・最初からです」



震える声で問いかけてくるマリューに、キラは躊躇いながら答える。

それが、マリューを苦しめるとわかってはいた。

けれど、偽りの答えなど、マリューは欲しくないだろう。



「そう、なの」



それきり口を噤んだマリューに、イザークが眉をつり上げた。



「貴様、言うことはそれだけか?」

「・・・」

「お前達は、キラがコーディネイターだと知っていたのだろう。

 知っていて、利用したのだろう。

 こんなことは、想像しなかったとでも言うつもりかっ」



唇を噛み締めるマリューを、イザークの吐き捨てるような言葉がさらに追いつめていく。

だがそれを、キラが止めた。



「イザークさん、やめてください。

 マリューさんだけが悪いわけじゃないんです。

 でも、ありがとうこざいます」



黙って耐えるマリューを思わずキラは庇うが、イザークの気持ちが嬉しい。

彼はアスランとはあまり仲が良くないらしく、キラにもあまり話しかけてこない。

それでも、イザークも、ディアッカ、ニコルもみんな優しいことをキラは知っていた。

そしてそれを、マリューも感じ取る。



「今のキラさんには、守ってくれる人がこんなにいるのね。

 私達には、いえ私にはできなかったわ。

 私が今更こんなことを言えた義理ではないのだけど・・・。

 キラさんを、他の3人のことも、よろしくお願いします」



アスラン達4人に、マリューは頭を下げた。



「ふん。言われるまでもない」

「大丈夫だって。

 女の子には優しいよ、俺達」

「ディアッカ・・・、はぁ。

 僕ら、キラさんを気に入ってますから。

 お友達のことも、任せてください」



キラとアスランは、顔を見合わせて、微笑んだ。



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