偽り−35 | ||
キラは女の子 | ||
「カガリ、いつまで黙っているつもり?」 「・・・」 ミリアリアはある日、カガリに問いかけた。 カガリは、未だに本名を、オーブの代表首長の娘であることを明かしていない。 彼らの乗るガモフは、現在アークエンジェルを追尾しているという。 ただし、現在地は把握されておらず、推測で動いている。 また、アスラン達の隊長がヴェサリウスで戻るのも待っているとも聞いた。 そのため、戦闘状態に陥ることもなく、ガモフでは平穏に日々が過ぎている。 この艦の乗員達は、当然ザフト軍人であり、コーディネイターだ。 ミリアリア達をナチュラルと知っていて、だが皆親切にしてくれる。 カガリが、軍というものに不信感を抱いていることには、ミリアリアも気づいていた。 しかし、彼らがカガリを利用するとは、とても思えない。 ならば、秘密にしていることで、彼らに迷惑が掛かるかもしれないことが心配だった。 それに、きっと本国では、大騒ぎになっているんじゃないかしら? 「カガリったらっ。 あの人達を、やっぱり疑っているの?」 「いや・・・。 彼らがどうというわけじゃないんだ。 ただ、彼らはしなくても、彼らの上官はどうだろう?」 「カガリ・・・」 カガリの心配もわからないではない。 「もう少し、待ってくれ。 もうじき、ヴェサリウスとやらが来るんだろう? その時まで」 *** 「あの、これでいいですか?」 「おっ、もうできたのか? どれどれ・・・」 バスターのコックピットに座ったキラの手元を、ディアッカは覗き込んだ。 「ここと、ここを変更しました。 これで、ご希望に添えると思います」 「ああ、ありがとよ。助かった」 「いえ、僕でお役に立ててよかったです」 にっと笑って礼を言うディアッカに、にこっと微笑むキラ。 「いや、ほんと助かった。 どうも、細かいことは苦手でよ」 「僕も細かいことは苦手ですよ〜。 プログラミングだけは別なんですけどね。 細かいことは、アスランが得意なんです」 「アスランが? まぁ、あいつはなんでも得意そうだが。 ・・・どうした?」 突然、何かに気づいたようにキラが口元に手をあてた。 そんなキラをディアッカは眉を寄せ、キラの肩に手を置く。 キラははっとして彼を振りあおぎ、すっと目を逸らした。 「いえ、なんでもないです」 「なんでもないって面じゃないぞ」 「ほんとに。 ちょっとアークエンジェルに置いてきたものを思い出して。 今まで忘れていたのがショックで」 「大事なもの、だよな?」 「アスランにもらったものなんです。 アスラン、マイクロユニットが得意で。 僕に、トリィをくれたんです。 あ、トリィって、ロボット鳥なんですけど。 ずっと、僕の宝物だったのに、なんで忘れたんだろう・・・?」 キラの言葉に、ディアッカは何かひっかかった。 何か、ディアッカの記憶にひっかかる気がする。 何だ? 何が気になるんだ? ・・・・・・・・・ロボット鳥! 「おい、キラ!」 「な、なんですっ?」 落ち込んでいたキラは、唐突にディアッカに方を揺さぶられた。 「それ、その鳥って、もしかして緑色の小鳥じゃないか?」 「え、ええ。そうです。 ・・・アスランから聞いてましたか?」 「あいつは、そんなこと話したりしないさ。 じゃなくてだな。 俺、見たぞ、それ」 「ど、どこでですか!?」 「嬢ちゃん達の乗ってきたシャトルさ。 あれ、キラのだったのか・・・」 *** 「ごめん、キラ。 トリィのこと、すっかり忘れていたわ」 トリィを肩に留まらせて現れたキラに、ミリアリアがはっとして謝った。 「ううん。ありがとう、ミリィ。 トリィを持ち出してくれてたんだね」 「うん。キラの一番大切な物だって知っていたもの。 パソコンと一緒にバックにしまっていたのを思い出して」 地球軍の艦内で、キラに悪意を抱く人間がいないとも限らない。 それで停止して隠して置いた。 それに、トリィを見ると、みんなを置いて、アスランのところへ言ってしまいそうだったから。 *** next |
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