偽り−34


キラは女の子


「・・・キラ、どこへ行くつもり?

 こっちだよ」

「う、うん。一人で大丈夫」



考え事をしていたキラは、うっかりアスランの曲がる方向へついて行き損ねた。

すぐに気づいたアスランが、キラの手を取り、引き戻す。

と、なぜかキラがその手を離そうとした。

慌てたように。

明らかに不自然なキラに、当然アスランは疑問の視線を向けるが、キラは首を振るばかり。



ふ〜ん。

ついさっきまで、手をつなぐくらい当たり前みたいにしてたのにな。

様子が違うのは、あの子達に何か言われたか?



「ア、アスラン!?」



いきなり肩を抱き寄せたアスランに、キラは焦ったように呼びかける。



「これなら、安心だろう?

 うっかり変な方へ行ったら困るからね」

「だ、大丈夫だってばっ。

 ほ、ほら、慣れないだけだから」

「・・・慣れない?

 でも、あの艦ではどうしてた?」

「あ、アークエンジェルは、ベルトに手をつくんだっ。

 だから、こんなふうに体が移動するのは初めてだよっ」

「じゃあ、尚更、こうしていくのがいいね」

「ううう・・・」



墓穴を掘った、とキラが唸った。

上目遣いにアスランを見る。



「楽しい?」

「そりゃね、当然だろう。

 キラは、俺に触られるのが嫌なのかい?」

「い、イヤじゃないけどっ。

 今は、ちょっと・・・///」

「キラ。真っ赤だよ」



しばし目を彷徨わせてから、ちろっとアスランを窺い見た。



嬉しそうだなぁ、ほんと。

こんなにドキドキするのは、やっぱり僕もそういう意味で好きだってこと?

朝までは、平気だったのに。

これが自覚した、ってことなのかなぁ・・・。



「ミリィ達がね、アスランと同じ事言ったんだよ」

「同じ?」

「僕がアスランを好きな気持ちは、恋だって///」

「ああ、やっぱりそうなんだ」



アスランは目元を和ませて、キラの額を指先でつんとつつく。



「あ・・・んっ」

「急がないから、そんなに心配そうな顔しないで」

「・・・それで、いいの?」

「いいさ。こうして、キラはここにいるんだからね」

「うん。もう、アスランのいない所はイヤだ」



***



「アスラン、遅いぞ。

 どれだけ待たせる気だ」

「すみません。

 僕が別の部屋にいたので・・・」

「あ、キラさんのせいじゃないですよ。

 イザーク。そんな言い方、キラさんが気にするでしょう。

 僕らが勝手に待っていたんですよ、もう」



年下のニコルに諫められ、イザークはふんっとばかりにそっぽを向く。

ディアッカはそれを見て、笑いを堪えていた。

そんな2人をニコルは呆れたように見る。



大人気ない・・・



「アスラン、キラさんにはなんと?」

「ストライクのロック解除を」



まぁ、妥当でしょうね。

まずは、信頼関係を結ばないと。



「キラさん。これ、ほんっとうにキラさんがやったんですか?」

「ロックのことですか?

 そうですけど、・・・変でした?」

「いえ、変っていうか・・・。

 解除できなくて、ちょっと悔しかったもので」



そう言われても、キラは首を傾げて瞬くばかりだ。



「キラ」

「あ、はい」



ストライクのコックピットに座ったキラは、キーボードを引き出す。

そして、淀みない手つきで、自分で掛けたロックを解いていった。

それを見ながら、アスランは何気ない口調で訊ねる。



「なぁ、キラ。モビルスーツからどうやって艦に干渉したんだ?」

「え?別に普通にだよ。

 前に繋いであったから、簡単だったんだ。

 ・・・っと、できた!

 すみません、余計なお手間をお掛けしました」

「艦の外からでも、できる?」

「ん・・・、どうかなぁ。

 できる、と思うけどね」



*** next

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