偽り−31


キラは女の子


「え、じゃあ、最初から知っていたの!?」



仕事があるというアスラン達4人が去った後。

残ったキラは、ミリアリアに訊かれるまま、話をしていた。



「う・・・ん。そうなるね。

 一番最初は気のせいだって思いたかったんだけど」



もう過ぎたことだから、と。

そう思うキラだが、さすがに当時を振り返ると暗くなる。



「辛かったでしょう!?

 ごめんなさい、気づかなくて・・・」



キラが辛そうなのはミリアリアとて気づいていた。

しかし、それはモビルスーツによる戦闘のせいばかりだと思っていた。



「ちょ、ミリィ、泣かないで!」

「だって、だって、・・・っ」



涙を滲ませ、しゃくりあげ始めたミリアリアをキラは必死で宥める。



「気づくも気づかないも、僕が黙っていたんだから、ね?」

「言える、はず、ないじゃないっ!

 そんなこと、私だってわかるわ。

 キラ、優しいもの」

「そんな、優しくなんか・・・」

「優しいわよ!優しすぎるくらいだわ!

 あの人、アスランさんと話した時に、行かなかったじゃない。

 私達があの艦にいたから。

 キラはモビルスーツに乗ったんだじゃないの!」



ミリアリアの涙は、キラを思いやっての涙。

キラは心が温かくなるのを感じながら、ミリアリアをそっと抱きしめた。



「ミリィ、もう終わったことだから。

 だから、そんなに泣かないで。

 ミリィだって、優しいよ。

 僕をここに、アスランのところに連れてきてくれたじゃないか」

「私、じゃないわ。カガリが・・・」

「うん。カガリにも、もちろんトールにも感謝してる。

 今考えれば、かなり無謀なことだったんだよね。

 うまくいったから良かったけど。

 みんな、死んでしまっていたかもしれないよ」

「だって、あのままじゃキラが・・・!」



いつまでも泣き止まないミリアリアに、キラは傍観している2人に視線で助けを求める。

動いたのは、トールだ。



「ミリィ、ほら、泣き止んで。

 キラが困ってるよ。

 それに、キラにもっと聞きたいことがあるんだろう。

 それを話さなくていいのか?」

「話・・・?

 ・・・・・・・・・、話!

 そうよ、話してもらわなくちゃっ!」



ミリアリアはがばっとキラから身を起こし、がしっとキラの両肩を掴む。



「話してちょうだい」

「ミ、ミリィ?

 話って、何?

 あ、いや、それよりまず、涙を拭こう、ね」



妙に真剣な目を向けてくるミリアリアに気圧されながら、キラはハンカチを差し出した。

ミリアリアもはっとして、それを受け取り、顔を拭く。



「ありがとう。で、聞きたいのは・・・」

「お前達、とりあえず座れ。

 周りにこれだけ椅子と机があって、立ち話もないだろう」



話を続けようとしたミリアリアを遮り、カガリが諭した。

たしかにその通りなので、3人とも席に着く。



「それで、何を聞きたかったの、ミリィ?」

「ひとつは、アルテミスで何があったか。

 キラ、泣いていたでしょう?

 気になっていたの。

 でも、それはいいわ、もう」

「いいの?」

「キラは笑えるようになってるし。

 言いたくないって顔してるしね、キラ。

 だから、今聞きたいのは、別のこと」



アルテミスのことを話さなくてよいと言われ、キラはあからさまにほっとした顔をした。

そんなキラに、ミリアリアのみならず、トールとカガリもそれには触れまいと思う。



「昨日、あのアスランさんと何かあったでしょう?」

「え?何かって・・・」

「ふっ。私の目は誤魔化せないわよ〜v」



一転して、にまにまと笑いながらキラに迫るミリアリア。

なんとなく嫌な予感に、戸惑うキラ。



「キラったら、今日は明らかに今までと違うもの。

 安心して緊張感が抜けたとか、そんなことじゃないわよ。

 さっきのトールへの反応よ。

 以前のキラなら、あんな恥じらって赤くなるなんてなかったわ。

 絶対、昨夜なにかあったはずよ!」



嬉しそうに宣言するミリアリアに、キラは首を傾げた。



なにかって、あれかなぁ・・・?



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