偽り−30


キラは女の子


「「「キラ!」」」

「ミリィ、トール、カガリも・・・」



呼び声に振り返ったキラが、立ち上がった時には、既に3人に囲まれている。

入り口からキラを見つけ、案内してくれたディアッカ達を追い越して駆け寄ってきたのだ。



「無事、だな?」

「心配したのよ、キラ」



皆の様子から、とてもキラを気に掛けていたのがわかる。



すごく心配してくれたんだ・・・。

それなのに僕は、自分のことばっかり考えて。



「ごめん。・・・ありがとう」

「よかったわ。・・・大丈夫?」

「うん」



いろいろあったけど、今ここにはアスランがいる。

もう、心配することはないんだ。



久しぶりに見る笑顔のキラに、ミリアリアとカガリもやっと安堵の表情を浮かべた。

ところが、ひとりトールはキラをじーっと見つめ・・・



「キラ、俺、お前のスカート姿、初めて見たよ!

 やっぱり、綺麗な脚してたな!

 でもどうせなら、もっと短くてひらひらした・・・痛っ・・・」



ミリアリアに力一杯突き倒されて、グシャッとつぶれる。



「ひどいよ、ミリィ。

 正直に言っただけなのにぃ・・・」

「少しは時と場合を考えなさい」

「いや、だってキラは気にしな・・・・・・え?」

「え!?」



床につぶれたままミリアリアを見上げていたトールは、キラに目を移して驚いた。

ミリアリアも目を見開く。



キラが顔を赤くして、恥ずかしそうにしていたのだ。



***



「んで、そろそろ紹介してくれよ。

 そんな子、この艦にいたか?」

「・・・なにを言っている、ディアッカ?」



興味深そうにキラを見るディアッカに、イザークが眉を寄せる。



「え、イザークは知ってるのか?

 俺は見覚えないぞ。

 こんな可愛い子、忘れるわけないんだがなぁ。

 特に、この紫色の瞳!」



ぐいっと顔を近づけてくるディアッカから、キラは身を引いた。

そのキラをアスランは後ろに庇う。



「ちょっとディアッカ、女の子を脅かしちゃいけませんよ」

「え、いや、俺は別に・・・」



キラがアスランの陰から不安そうに見るのを目にして、ディアッカは頭を掻く。

ニコルと、驚いたことにアスランまで自分を睨んでいる。

困ったディアッカは、イザークを見た。



「お前が悪い」

「おいおい・・・」

「キラ・ヤマトさんですよ、ディアッカ。

 ほら、ストライクに乗っていた」



イザークにまで睨まれたディアッカに、仕方なくニコルが助け船を出す。



「だって女だろ?」

「それは僕も同じ事思いましたよ、ええ。

 でも、彼女がストライクのパイロットだそうです」



***



突然目の前に現れた2人は、アスランやニコルと同じ真紅の軍服姿だ。

その内の一人に間近に迫られて、キラはびっくりしたが、すぐにそれに気づく。



「アスラン、この人達もニコルさんと同じ?」

「ああ。銀髪はイザーク・ジュール。

 デュエルのパイロット。

 金髪はバスターのパイロットで、ディアッカ・エルスマン。

 2人とも、同じクルーゼ隊の一員だ」



キラの問いかけに、アスランは睨んでいた顔をさっと緩め、キラを振り向いて答えた。

背後では、ニコルがディアッカにキラを説明している。



「それより、キラ。

 俺にキラの友達を紹介してくれないかな」

昨日、名前は聞いたけど。



アスランの示す先で、ミリアリア達が興味深そうにキラを見ていた。



「ミリアリアとトールは、工業カレッジで同じゼミなんだ。

 カガリとは、教授のラボで初めて会ったんだけど。

 アスランは、僕の幼なじみ。

 ミリィとトールには、話してあったよね」

「キラの親友でしょ。綺麗で優秀な、ね」

「すごい、偶然だよな」



ミリアリア達と屈託なく話すキラに、アスランは安心する。

昨日はキラに大丈夫だと言ったが、本当にそうか、少し心配だったのだ。



これなら、キラを彼らに預けておける、か・・・。



*** next

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