偽り−27


キラは女の子


「えへへ。本物のアスランだv」



キラの涙に負けて、結局アスランは自室にキラを連れ込むこととなった。

そればかりでなく、キラはアスランのベットにまで潜り込んでくる。



さっきアスランが話したことは、すっかり記憶の彼方へ押しやったらしい。

にこにこと、嬉しそうに笑うキラに、アスランは頭が痛くなりそうだった。



キラには恋云々よりも、自分が女である自覚をさせるのが先だな。

このままじゃ、俺がもたない。



「一緒に寝るのって、久しぶりだね!

 3年・・・じゃない、もっとか。

 別れる1〜2年前あたりから、気を付けていたから」

「キラ、どうしても一緒に寝なくちゃ駄目か?」

「だって、その方が良く眠れるもん。絶対。

 もうアスランには、ばれちゃったからさ。

 こうして、くっついていても平気だしね。

 それに、でないと心配で寝られそうにないんだ」



ぺとっ、とアスランにすり寄るキラは無邪気そのもの。

アスランは、その柔らかな感触に、自制するのがやっとだ。



キラが一人で寝られないというのはわからないでもないんだが。

これでは、俺が眠れない。

かといって、拒否すれば泣きそうな顔をされて・・・。

なんだか、昔よりも我が儘になってるな。

いや、甘えてるのか?



アスランが髪を梳くように撫でると、キラは気持ちよさそうに目を細める。

その体つきを除けば、昔のままのキラだった。



ずっと、一人で頑張ってきたんだ。

あの友人達がいたにしても。

嫌いな戦争に巻き込まれて。



「今日だけだぞ」

「えーっ!?」

「イヤなら、追い出す」

「・・・わかった」



不満だ、と顔に書いたキラにの額に、アスランはキスをする。

と、キラは嬉しそうな顔になった。



「おやすみ、キラ」

「おやすみ、アスラン」



***



すやすやと、よく眠っていると思ったキラが、唐突に魘され出した。



「う・・・や・・・・・・っ」

「キラ?」

「アスラ・・・たす・・・っ」

「キラ!?」

「イヤァッ!」



驚いて起き上がったアスランは、揺り起こそうとした手をキラに払われる。

さらには暴れだすキラを、今度は覆い被さるようにして押さえつけた。

なおもキラはもがいたが、力でアスランに勝てるわけがない。



「キラ、キラ、落ち着いて。

 俺だ、アスランだよ。

 俺はここにいる。

 大丈夫だよ・・・」



アスランはキラの様子に動揺しながらも、努めて静かな声で呼びかけた。



「あす、らん・・・?」

「そうだよ、キラ」

「アスラン・・・」



動きを止め、アスランの名を呼んだキラはゆっくりと目を開ける。

そして、自分の上にいるのがアスランだと確認すると、すうっとまた眠りに落ちた。



「キラ・・・」



キラは今まで、ずっと両親に守られて育った。

そのキラが、ヘリオポリスで戦争に巻き込まれて。

あの艦で頼るものも無く、どんな思いでいたのか。

眠りが浅いと言っていた。

今のはアルテミスでの後遺症だったようだが。

艦では、気の休まる時もなかったのだろう。



アスランはキラの体勢を、眠り心地の良いように変えてやる。

キラが起きぬように、そっと。

頭の下に腕を通してキラを抱き込む。

キラの様子がよくわかるように。

キラが目覚めたとき、安心できるように。



「安心して、お休み。

 もう、キラを脅かすものは無いよ。

 俺が守るから」



乱れたキラの髪を手で整えてやり、アスランも目を閉じる。

と、もぞもぞとキラが動いた。

ぬくもりを求めてか、アスランにすり寄る。



「ん・・・アスラン・・・大好き・・・」



小さく紡がれたキラの寝言に、アスランはあやうく起きあがろうとしてしまった。

そんなことをしては、キラが目覚めてしまう。

なんとか堪えたアスランは、やがてクスッと笑った。



「お休み・・・」



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