偽り−26


キラは女の子


「ここを使って」



アスランの軍服を上に着たキラは、アスランに手を引かれて部屋へと案内された。

キラはきょろきょろと部屋の中を見回してみる。

どうやら使っていない、空き部屋のようだった。



「僕、一人?」

「ああ。キラの友達は、別の部屋にいるよ。

 会いに行く?」

「・・・ううん。

 もう休んでいるだろうし。

 元気だったんでしょ?

 それなら、明日でいい」



暗い顔をするキラに、アスランが心配顔になる。



「彼らは、キラが顔を見せれば喜ぶと思うよ。

 泣いていたって、とても心配していたから。

 いい友達だね。

 キラが守りたいって言ったのもわかるよ」

「うん、そうなんだ。

 みんなね、僕に戦わなくていいって言ったんだ。

 戦うのもイヤだったけど。

 アスランと敵の立場でいなくちゃならないのが辛かった。

 でも、それは言えなくて。

 誰にも相談できなくて」



大好きな親友と、大切な友達。

板挟みになったキラは、一人で耐えていたのだ。

その原因の半分であるアスランは、過去を思って悔やむ。

だが、今はキラの独白を黙って聞いていた。



「でも、アルテミスで身動きとれなくなっちゃった。

 ミリィ達を守りたい。

 戦いたくない。

 どうしたらいいのか、わからなくて。

 そうしたらね・・・」



何を思いだしたのか、キラが微かに微笑んだ。



「カガリの声が聞こえた。

 アスランに会いに行こう、って。

 自分達も一緒に行くから、って。

 それでもう、それしか考えられなくなった。

 ここを出て、アスランのところに行く。

 もう、守るために戦わなくていいんだ。

 なのに、ね。

 怖くて・・・。

 さっきも言ったよね」



キラは笑みを消す。



「アスランといると、安心できるんだ。

 でも、トールと会って、怖かったらどうしよう。

 そう思うんだ。

 僕が怯えを見せたら、傷つけてしまう。

 トールは、ミリアリアもカガリもだけど。

 僕をアスランのもとへ、ザフトへ連れてきてくれた。

 アスランとは違うけど、みんな大切な友達だから。

 それに、心配かけてしまうことにもなるよね」

「馬鹿だな、キラは。

 そんなこと、考えていたのか」



頭をポンポンと撫でられ、キラがアスランを見た。

アスランは、キラに優しく微笑みかけている。



「キラの感情が、ちょっと混乱していただけだよ。

 それに、通信機越しに声を聞いただけなんだろう?

 そんなに心配なら、先に他の人間に会ってみればいい。

 明日の朝、早めに迎えに来るよ」



キラが躊躇いながらも頷くのを確認して、アスランはベットの上の衣類に手を伸ばした。

おそらく、ニコルあたりが用意しておいてくれたのだろう。

ただ、それが男物であるのを知り、アスランは苦笑した。



そういえば、キラの性別についての話はしなかったな。

ニコルは眠っているキラしか見ていないし。

俺の上着を掛けていたからな。



「こっちを着て寝ればいいよ。

 服は、明日俺が女物を持ってくるからね。

 シャワーはこっちだから、使って。

 ゆっくり休んでくれ。

 じゃあ、俺は行くよ」

「え?」



アスランが部屋を出ようとした途端、キラがその腕をがしっと掴んだ。



「キラ!?」



驚いて振り返るアスランは、涙ぐむキラに慌てる。



「一緒の部屋がいい。

 ダメ・・・?」

「駄目というか・・・」



うるる、と涙を浮かべたキラは、アスランを動揺させた。



「昔みたいに。

 アスランと一緒なら、よく眠れると思うんだ。

 ダメ・・・?」



・・・キラ。俺が眠れないぞ、それじゃあ。



*** next

キラ、まだ寝るつもり・・・?
よほど寝不足だったのね〜と思いましょう
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