偽り−25


キラは女の子


「俺はもう、キラと親友ではいられない」

「どうして?」



僕はアスランが一番好きなのに。

アスランには、プラントで一番好きな人ができちゃったのかな・・・



「我慢できないから」

「・・・・・・・・・なにを?」

「・・・」



キラ、今俺が何をしたのか、わかってるか?

応えてくれたし、今もこうして身を預けてくれているのだから、嫌ではなかったと思うんだが。

・・・・・・・・・キラだからな。

そういうこともあるかもしれない。



はぁ、と大きくため息を吐いたアスランは、ゆっくりとキラから身を離す。

キスの余韻で、キラの頬は上気して、唇が赤みを増していた。

目は潤み、表情に艶がある。

今のキラなら、少年に間違われることはないだろう。

本人に自覚はなくとも。



「キラは俺をどう思っている?」

「一番好き。

 ヘリオポリスでも友達はできたけど。

 アスランが一番好き。

 あ、頼るって意味じゃないよ?

 ただ、アスランがいなくて、寂しかった」

「俺も寂しかったよ。

 戦争が本格化して、キラのことが心配だった。

 いや、ちょっと違うか。

 キラが、俺の手の届かないところにいるのが嫌だった。

 もしかしたら、キラには俺の代わりになる友達がいるかもしれない。

 それが、心配だった」



それを聞いて、キラの瞳に輝きが戻る。



「なら、やっぱり、親友だよねっ!」

「・・・俺はね、キラ。

 キラにいつも幸せに笑っていて欲しいと思う」

「僕も。僕もアスランに笑っていて欲しいよ」

「うん。わかってるよ。

 でもね・・・

 キラの幸せが、俺のいないところにあるのはダメだ。

 俺が、キラを幸せにしたい。

 キラが俺以外の人間に奪われるのは絶対に赦せない。

 そんなのは、親友じゃあないだろう?

 友達は・・・」



アスランはキラの唇に、触れるだけのキスを落とした。



「こんなこと、しないよ」

「・・・・・・・・・」



キラはアスランを見つめたまま沈黙した後・・・



「ア、アスラン!?」



顔を真っ赤にしたキラが、裏返ったような声を出す。

そして、あの、とか、えっと、とか言いながら、口をパクパクとさせた。



「キラが好きなんだ。

 そういう意味でね。

 ・・・わかった?」



キラはまだ言葉が自由にならないらしく、首をぶんと上下に振る。



「恋人になりたい」

「!」



そんな、こと、言われても・・・



はっと息を呑んだキラは、だんだんと視線を下げ、俯いた。

そして、両手をアスランの胸にあて、腕を伸ばす。

離れよう、と。

腰にまわされたアスランの腕で、果たせなかったが。



「・・・嫌なのかい?」

「じゃなくて。

 アスランのこと好きだけど。

 アスランより好きだって思える人はいないけど。

 よくわからない」



キラは、こんなこと言ってアスランに嫌われないかと不安だった。

離れようと突っ張った腕に反して、俯いたキラの手はアスランの服にしがみついている。

反応を待つキラにとっては長い、だが実際にはほんの少しの沈黙の後。

その頭上で、アスランがフッと小さく笑うのを感じた。



「俺とのキスは、嫌い?」

「嫌いじゃない」

「またしても、いい?」

「・・・・・・・・・アスランなら」

「他の人は、嫌?」

「イヤ」

「それならいいよ」



ばっと顔を上げたキラは、そこに笑顔のアスランを見る。



「いいの?」

「いいさ。キラはわかってないだけなんだから」

「むっ。だからわからないって言っただろ」

「ちょっと、意味が違うんだよ」



アスランは、またもキスをし、ウィンクをしてみせた。



「大丈夫。俺が自覚させてあげるから」



*** next

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