偽り−24


キラは女の子


「今も怖いかい?」

「・・・わかんない」



キラが少し落ち着き、しがみ付いた手が緩むのを待って、アスランはキラを上向かせる。

アスランはキラの涙に濡れた顔を拭いてやった。

キラは目を閉じて、されるままにしている。



「トールと通信機越しに話そうとしたら、怖かったんだ。

 声が聞こえて、トールだ、と思った途端に。

 でも、その後アスランとは平気だったし。

 というより・・・、そう、安心したんだと思う」

「俺だけ?」

「うん。あそこでストライクのシステムをいじっている時にさ。

 目の前で向けられていた銃は、そんなに怖くなかった。

 ・・・ううん。違うな。

 銃なんかじゃなくて、そこにいる男の人が怖かったんだ。

 だから、銃そのものは、ね」

「ここで、ストライクを降りた時も同じだったのか」

「そう・・・」



自分に向けられる銃口ではなく、そこに集まった男達が怖かった。



キラはアスランに手を伸ばす。

その腕や肩、胸に触れ、全身をまじまじと見つめた。



「不思議だよね。アスランも男なのに。

 会わなかった3年で、すっかり逞しくなっちゃったし。

 男の人が怖いって思いながら、僕はアスランに助けて欲しかったんだ。

 父さんや母さんでもなく。

 ミリィ達でもない。

 アスランのことしか、思い浮かばなかった。

 ずっと、ずっとアスランと一緒だったよね。

 だからかな?」



話しながら、キラの顔色がだんだん悪くなっていた。



「休んだ方がいいな」

「ヤダ。せっかくアスランといるのに」

「具合が悪い時は・・・」

「今、寝たばっかりだよ!

 それに、具合が悪いわけじゃない。

 ちょっと思い出して気持ち悪いだけ」



言いながらキラは片手を口元に当てる。

それで、アスランにも何のことかわかった。



「忘れてしまえばいい。・・・そんなもの」

「覚えていたくなんか・・・」



アスランは素早かった。

キラの腰を抱き寄せ、顎を持ち上げて唇を合わせる。

突然のことに驚いたキラは、なんの抵抗もできなかった。

目を見開いたまま、その唇にアスランの進入を許す。



アスランが、・・・僕に、キスしてる?

キス、だよね?

なんで・・・



思わぬことに混乱したまま、だがキラは目を閉じてアスランに応え始めた。



***



長い口づけの後、キラとアスランはただ抱きしめ合う。

ちょっと息を切らしたキラは、アスランの胸に頬をあて、荒い息を吐いていた。



「アスラン・・・」



かすれた声でキラが話しかける。

まだ息が整わないので、ゆっくりと。



「アスラン、なぜ?」

「・・・」

「君と僕は、親友だったよね。

 今は、違うのかな・・・」

「・・・」

「アスラン?」



嫌じゃ、なかった。

アスランとのキスは、嫌じゃなかった。

ちょっと苦しかったけど、気持ちよかった。

でも・・・

胸の奥で、自分でもよくわからないものが騒いでいる気がする。

嬉しい、ともちょっと違う。

哀しいわけではないが、はっきりしない。



キラは、自分で自分がよくわからなくて、不安になった。

アスランの答えを聞けば、わかるんじゃないかと思う。

しかしアスランは黙ったままだった。



キラがアスランの顔を見ようとすると、アスランがその頭を押さえる。



「アスラン?」

「親友じゃないよ」



静かな、だがきっぱりとしたアスランの言葉に、キラの心臓が止まりそうだった。

キラは泣きそうになりながら、アスランに問い直す。



「僕、もう親友じゃないの!?」

「違う」

「嫌いになった?

 僕があんなことしたから?

 あんなこと、されたから?

 それとも、やっぱり僕が女だから?

 だから、親友ではいられないの?」



否定して欲しくて、キラは必死で訊いた。

だが・・・



*** next

いくらなんでも、キラ鈍すぎ・・・
でもこのお話ではこのキラでいきます
このくらい鈍くないと、先のショックが大きいかなと
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