偽り−22


キラは女の子


「おはよう、キラ。

 よく眠れたみたいだね」



目を覚ましたキラは、すぐ目の前にある顔をぼぉっと見つめる。

翠の瞳を持つ綺麗な少年が、覚えのある穏やかな笑顔でキラを見ていた。



「アスラン・・・?」



なんでアスランがいるんだろう・・・。

夢かな?

夢、だよね。

お別れの時は、可愛らしい感じだったんだけど。

やっぱり、こんな風にかっこよくなってるんだろうなぁ。



「どうしたの?寝ぼけてるのかい?」



あれ?しゃべってる。

声も低くなってるな・・・、って・・・



キラは手を伸ばし、自分を見下ろすアスランの顔に触れる。



ぺたぺた、ぺたぺた。



感触がある・・・



つんつん、つんつん。



「痛いっ、痛いよ、キラ!」



髪の毛を引っ張ると、アスランが痛そうに顔を歪めた。

そして、悪戯をするキラの手を、アスランが掴む。



「・・・痛い」

「ああ、ちょっと力を入れすぎちゃったね」



握られた手が、少し赤くなっていた。

キラはその手とアスランの顔とを交互に見る。

そして、目を瞬くと・・・



「本物!?」



がばっと勢いよく起き上がった。

・・・アスランがうまく避けなければ、2人とも痛い思いをするところだったろう。

そんなところには頭の回らないキラは、少し仰け反ったアスランににじり寄った。



「本物、だよね?」



必死な様子のキラは可愛らしく、アスランは笑みを深くする。



「そうだよ」

「どうして、ここにいるの?」

「・・・忘れちゃったの?

 キラはここがどこだか、覚えてる?」

「どこって・・・」

アークエンジェル・・・あれ?



キョロキョロと辺りを見回し、キラは首を傾げた。



こんな部屋、あったっけ?

知らない部屋もいっぱいあるけど・・・



見覚えのある空間とは、明らかに様子が違うのに、キラは気づく。



「どこ、ここ?」

「・・・ザフト艦、ガモフ」

「え?」

「キラは、友達と一緒に、僕らに助けを求めてきたんだろう?」

「あ」



そうだった。

カガリが、アスランに会いに行こうって言ってくれたんだ。



「カガリ達は?」

「さっきまでここにいたんだけどね」



くすくすと、アスランは可笑しそうに説明し始めた。



「結構、大きな声で話してたんだけど。

 全然、気がつかなかったみたいだね?」

「・・・うん」

「一通りの話を聞いたんで、部屋へ案内したよ。

 キラがあんまり気持ちよさそうに寝てるんで、起こせなくてね」



からかうように言われて、キラが顔を赤らめる。



「変だな、僕、最近眠りが浅かったんだけどな」

「そうなのかい?」

「うん」



キラは、小さな子供のように、大きく頷く。

キラに自覚はなかったが、ずっと張りつめた時間を過ごしてきた。

心から信頼できるアスランが傍にいることで、その緊張が一気に緩んだようである。

三年前に、戻ったような気分だった。



ああ、ほんとに、アスランだ。

もう会えないかも、って思っていたのが、嘘みたい。



にこにこと、キラは嬉しそうにアスランを見つめた。



そんなキラに、アスランは訊かなければならないことがある。

あの3人の知らない事情。

おそらくは、キラにとって思い出したくない事が含まれているだろう。

キラの笑顔を消したくはないが、これはアスランがすべきことだった。



*** next

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