偽り−21


キラは女の子


「ニコル、いつまでやっている?」

「イザーク。

 今、機内を確認していますので・・・」

「終わったぞ〜」



ニコルが言いかけたところで、ディアッカがシャトルから出てきた。



「これに乗ってたのは、その3人だけで間違いない。

 後は、整備班の仕事だな」

「そうか。

 それなら、行くぞ。ついて来い」

「あ、ちょっと、イザーク!

 彼らは・・・、って・・・」



ディアッカの報告に、イザークはさっさと背を向ける。

ニコルとディアッカは顔を見合わせて肩をすくめた。



「そいつらも連れて行くってことだな、あれは」

「そうですね。

 でも、あんなに急がなくてもいいと思うんですけど」

「ストライクに執着してたからな、あいつは」

気になるんだろうよ。



***



「アスラン、連れて来たぞ」



イザークは部屋に入り口で声を掛けるが、返事がない。

だが、ずかずかと入り、こちらに背を向けて座っているアスランの前に回り込んだ。



「おまえは、・・・無駄か」



イザークは、アスランがまるで聞いていないのに気づき、ため息を吐く。



ソファに腰掛けたアスランの膝を枕に、キラが眠っていた。

その上にはアスランの赤い軍服が掛けてあり、二人の手は繋がれている。



軍服を脱ぐなと言ってやりたかったが・・・。

イザークも、キラの服がどのような状態だったかを見ている。

眠っている少女の服を着替えさせるわけにもいかないのだから、黙認することにした。

もう一度ため息を吐いてから、イザークも座る。



そこへ、ディアッカ達が入ってきた。



「おい、ニコル。ここにいるぞ!」

「イザーク、一人でさっさと行かないでくださいよ」

捜しちゃったじゃないですか。



「僕らだけじゃないんですから、少しは気を遣ってくれないと。

 さぁ、皆さんも入って座ってください」



***



「キラ、よく寝ているわね」

「そうだな。・・・なんか心配したのが馬鹿らしくないか?」

「・・・・・・・・・まぁ、キラ、あんまり寝ていなかったみたいだから」

「もしかして、通信に応えなかったのって、寝てたとか?」

「いや、でも泣いていたのは確かだと・・・」



キラが無事なのを確認して、安心した3人は、気が抜けてしまった。

つい、立場を忘れて軽口を叩く。

それを現実に引っ張り戻したのは、イザークだった。



「いい加減、本題に入れ」

「あ、・・・すまない。

 なにから話せばいいだろうか?」

「とりあえず、お名前を」



***



これが、キラが守ると言っていた友達、か・・・。



話はニコル達に任せ、アスランは黙って聞いていた。



彼らが地球軍の艦に乗ることになった経緯。

キラがストライクに乗らざるを得なかった理由。



ニコルもイザークもディアッカも。

地球軍への怒りが増したようだな。

これで、キラが責められることは避けられるだろう。

キラは、俺と彼らの板挟みになっていたんだな。

お前は優しいから・・・。



「それで、アルテミスでなにがあった?」



今のアスランには、それが一番の気がかりだ。



「え、なにって・・・?」



突然口をはさんだアスランに、彼らは顔を見合わせた。

訊かれているのは、キラのことだろうと思うが、彼らも知らない。



「キラ、あそこの司令官って人に連れて行かれてしまって」

「ストライクのパイロットを、って言って。

 キラ、フラガって人に言われてストライクにロックを掛けたそうです。

 だから、それでだと思うんですが。

 もちろん、みんなキラがそうだなんて言わなかったです。

 ただ、ミリィが乱暴にされて、キラが庇って名乗り出ちゃったんですよ」

「その後、キラに会ったのはここでなんです。

 私達、騒ぎに乗じてシャトルに乗り込んだんですけど。

 その時には、もうキラはストライクに一人だったみたいです」

「通信では映像は切られていたんだ。

 ただ、キラが泣いているのはわかった。

 よほど嫌なことがあったらしいことしか、私にはわからない」

「すごく、すごく辛そうに泣いていたんです・・・。

 アスランっていう、幼なじみの名前を呟きながら・・・」



で、その同じ名前の少年の手を、キラは握りしめて眠っている。

その場の全員からの問いたげな視線に、アスランが答えた。



「俺がそのアスランだ」



*** next

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