偽り−20


キラは女の子


「おい、アスラン。いい加減に説明しろ」



アスランは気に入らないが、相手は泣いている女。

仕方なく待っていてやったのだ。

その声にも顔にも、不機嫌さがにじみでている。



背後からのイザークの声に、アスランはキラを抱えて振り返る。



「ディアッカとニコルは?」



望む答えと違う、とイザークの不機嫌さは増した。

だが、律儀に答える。



「ニコルはおまえがシャトルを任せたんだろうが。

 ディアッカはそのフォローに行っている」

「ああ、・・・そうだったな」



キラのことしか考えていなかったので、すっかり忘れていたアスランだった。

その気の抜けた口調からイザークも察したのだろう。

イザークの表情が、一転、呆れたように変わった。



「そういえば、アルテミスはどうした?」

「とっくに墜とした」

そうでなかったら、戻ってくるかっ!



イザークは、さすがに怒鳴ってやりたかったが・・・

今のアスランには、いつも以上に効き目がないだろうと諦めた。

それに・・・少女が目を覚ましてしまうかもしれない。

さっきのように泣かれては、困る。



大きく深呼吸をして、イザークはなんとか怒気を抑えた。

そして、改めて問う。



「説明してくれるんだろうな」

「ああ。ただ、一度で済ませたい。

 それに、あちらの・・・」



そう言って、やや離れたところに固定されたシャトルを見やる。



「あれに乗っている人間の話を俺も聞きたい。

 こいつのことは知っているが、どうしてこうなったかは知らないからな」

「・・・いいだろう。

 お前は、その女を先に連れて行け。

 俺は、あいつらを連れて行く」



***



シャトルのハッチ前で、ニコルは他の兵士達とともにそれが開くのを待っていた。

着艦するまでの通信で、これに乗っているのが同年代の少年少女3人と聞いた。

実際、モニターに映ったのはそのとおりの人物達だったが・・・

もちろん油断は禁物として、銃口が向けられている。

他に乗っていない保証はないからだ。



緊張感漂う彼らの前に、ハッチが開き、カガリが飛び出してきた。



「キラはどうした!?」

「ちょっ、ちょっと待ってください。

 ・・・撃たないで!」



まるで銃など目に入っていないかのように。

一気にニコルのもとまで飛んできたカガリに、ニコルの方が慌てる。

周りの兵士が、咄嗟に引き金を引きそうになるのを制止した。



「危ないで・・・」

「キラは!?」

「あ、と、・・・キラっていうのは?」



注意しようとしたニコルは、必死になっているカガリに、苦笑を浮かべる。

どうやら、一つのことにしか頭が回っていないらしい。

言っても無駄だろうと、ニコルは思った。



「ストライクに乗っていただろう!?」

「ああ、あなた方のお友達でしたね。

 ストライクは、ほら・・・」



言いながら、ニコルはストライクのあるモビルスーツハンガーを指す。



「もう先に来てます。

 その彼も、皆さんと同年代なんでしょう?

 それなら大丈夫ですよ」



またしても、キラの性別が誤解されている。

まぁ、名前では判別はつかないだろうし。

モビルスーツの操縦を、少女がしているとは思いにくい。

口を開きかけたカガリは、しかしニコルの次の言葉に気を取られた。



「アスランは、民間人になにかしたりする人じゃないですから」

「・・・アスラン?」

「イージスのパイロットです」

「アスラン・・・」



なにやら考え込んでしまったカガリに、ニコルが不思議そうな顔をする。



「知っているんですか?」

「あ、いや。

 ・・・知り合いに、というか知り合いの知り合いにそんな名前があったと」

「へぇ。珍しいですね。

 あまりないと思いますよ、アスランというのは」

「そうなのか?」



ニコルとカガリが話しをしていると、ミリアリアとトールがやってきた。

二人は、カガリが飛び出してしまったのを心配しながらも、恐る恐るやっと出てきたのだ。



「「カガリ、キラは?」」



*** next

アスランという名前は、よくあるものなんでしょうか?
わからないので、珍しい名前ということにしました
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