偽り−18


キラは女の子


『そのまま待っていてくれ。』



ストライクはイージスによって、ガモフのモビルスーツハンガーに固定された。

アスランはその隣にイージスを置いてくると言う。



「うん」



もうモビルスーツを操作するのは嫌だが。

このままではコックピットを開けることもできない。

それを思い出したキラは、ハッチのロックを解除した。



やっとアスランと、本当の再会ができる。

キラは嬉しくて。

早く顔が見たくて。

キラは少しでも早くと、コックピットを出た。



嬉しくて、浮かれて、・・・忘れていたのだ。

ここには、アスラン以外の人もいることを。



「え?あ・・・」



キラの目に、ストライクの周りに集まる、兵士たちが映った。



「ヤダ、ヤーーーーーッ」



一瞬硬直したキラは、次の瞬間、大きく叫んでコックピットの中に逃げ戻る。

シートの上に丸まって震え始めた。

彼らの手に銃が握られ、自分に向けられていたのはどうでもいい。

いや、キラはそれに気がつかなかっただろう。



「キラ!?」



キラの叫び声に、物凄い勢いでアスランがストライクのコックピットに飛び込んだ。



「キラ、大丈・・・」



背を向けて震えるキラに、アスランはそっと手を伸ばしてその背に触れる。

それにビクッと一際大きく震えたキラが、バッと振り向いた。



「キラ・・・?」



怯える顔が、アスランと目を合わせた一瞬で緩む。

そのまま泣き顔へと変わったキラは、アスランを見上げた。



「あす、らん・・・」

「キラ、おいで」



両手を差し出したアスランへと、キラは飛びつく。



「あすらん、あすらん・・・」



アスランの首にしがみ付いたキラは、もう相手の名前を呼ぶしかできなかった。

いろいろ、話したいことがあるのに。

涙が溢れて、言葉にできない。



「キラ」



やっと、この手に帰ってきた。

やっと、キラを取り戻したんだ・・・



アスランはキラの背にまわした腕に力を込めた。



キラが飛びついた勢いで、2人は格納庫内を抱き合ったまま流されていた。

だが、既に互いのことしか見えていない二人は、周りの視線に気づかない。



すっかり2人だけの世界にいたが、それを破る怒声が響いた。



「おい、貴様。いったい、何してる!?」



あまりの驚きに、アスランの肩に伏せていたキラの顔が上がる。

怒りを露わにこちらを、アスランを睨み付ける、少年。



キラはビクッとした。

しかしなぜか、怖くない。



さっきまで、あんなに怖かったのに・・・



アスランはキラを抱きしめていた腕を解き、イザークに対してキラを庇った。

イザークはなぜかいつも、アスランを目の敵にしている。

自身のことであれば聞き流すが・・・



「イザーク」



キラを傷つけるようなことはさせない、と。

アスランはイザークを睨み返した。



「その女は、なんだ?

 そいつがストライクのパイロットなのか?」

「キラは民間人だ」



答えてから、アスランは怪訝そうな顔になる。



「女?キラは男だぞ?」

「・・・お前の目は節穴か?」



アスランはキラの顔以外、ろくに見ていなかった。

すぐにキラと抱き合ってしまったこともある。

パイロットスーツ越しでは、キラの、少年にはない柔らかさに不自然さを感じなかったのだ。



まさか、と。

アスランが、キラを振り返り、その目が見開かれる。



「キラ、いったい・・・?」



キラの服は少年にしか見えない。

ゆったりとしたそれは、体の線を隠している。

しかしその胸元は。

無惨に引き裂かれた布地の間から、胸の膨らみが覗いていた。



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