偽り−16


キラは女の子


『アスラン!こちら、ニコルです。応答してください!』

「どうした?」



アルテミス攻略の真っ最中。

つまり、戦闘中である。

わざわざ回線を開いてくるのは、よほどのことが起きたのだろう。



内部に入り込んだブリッツ。

正面から攻撃を仕掛けている、デュエルとバスター。

アスランのイージスは、背面へ回り込む途中だった。



『アスラン、今どこですか?』

「ガモフから見て、反対側に回るところだ」

『よかった。急いで来てください!』



???



ニコルの声に、緊迫した様子はない。

だが、困っているのは確かなようだが。



『反対側の港口にいますから。』

「あ、ああ。了解した」



目標地点に近づき、アスランは目を見開いた。

レーダーに映る機影が3つ。



ブリッツと、・・・ストライク!

キラとニコルと戦っているのか!?



慌ててイージスの速度を上げた。



モビルスーツが動かせても、戦闘には勝てない。

戦略や経験が無ければ。

キラは地球軍ではないと言っていた。

ならば、戦闘経験などあったはずがない。



キラ、無事で・・・!



***



アスランの前方にブリッツと・・・

フェイズシフトがダウンしたストライク。



「まさか・・・?」



一瞬、キラの死を思い浮かべたアスランだった。

しかしよく見ると、戦闘で破壊されたようではない。



「ニコル、何があった?」

『アスラン。それが・・・

 ストライクとシャトルに乗ってるのは民間人らしいんです。』

「シャトル?

 あ、・・・ああ、地球軍のもののようだな。

 民間人だと?」



キラのことで頭がいっぱいだったアスランは、すぐ横にシャトルがいるが目に入らなかった。

・・・レーダーでは確認したはずなのだが。

ニコルに言われて、やっと気づいた。



『ええ、そう言ってます。

 自分達は、オーブの民間人だと。

 ヘリオポリスで、地球軍に拘束されたそうで・・・。』



ニコルの声も表情も、困惑がにじみ出ている。



地球軍のものとわかっていても、抵抗しないものは撃てない。

ましてや、相手は助けを求めている。

しかし、それが信用できる保証もない。

ここから母艦に通信が届かない以上、自分で判断するしかないのだが・・・



シャトルはともかく、ストライクをブリッツ一機で連れて行くのは危険だろうと。

もし、これが偽りであれば。

だから、ニコルはアスランを呼んだのだろう。



ニコルで、良かった。



アスランはそう思った。

これがイザークかディアッカであれば、問答無用で攻撃した可能性が高い。

ストライクにキラが乗っている保証は無い。

無いが・・・



「ストライクのパイロットは確認したか?」

『それが、応答がないんですよ。

 シャトルの乗員が言うには、自分達の友人だってことなんですが。

 話せる状態じゃないとかで。』

『おい、お前達!』



アスランとニコルの通信に、少女らしき声が飛び込んできた。



『私達を警戒しているのは、わかる。

 わかるんだが・・・。

 申し訳ないが、急いでもらいたい。

 ストライクに乗っている友人の様子がおかしい。

 ・・・アルテミスで、なにかあったらしいんだ。』



その声からは、焦燥感がうかがえる。

ニコルは、少なくとも、彼女がストライクにいる友人を本当に心配しているのだと感じた。

だがアスランは違う。

言葉の真偽よりも、その内容が問題だった。



「ストライクに乗ってるのは誰だ?」

『キラ。キラ・ヤマトだ。』



*** next

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