偽り−15


キラは女の子


「どうやら、ザフト軍の攻撃らしいな」



カガリ、ミリアリア、トールの3人は混乱に乗じ、アークエンジェルの内のシャトルに乗り込んでいた。

カガリ主導のもと、発進準備を進める。



「え?・・・ここにはアルテミスの傘っていうのがあるんだろ?」

「さてな。どうやったかはわからないが・・・。

 チャンスでは、ある」



本当は、航行中のアークエンジェルからそっと脱出するか。

もしくは、ザフト軍が攻撃してきたら、助けを求めようと思ったのだ。

3人にとって、地球軍もザフト軍もさして変わらない。

・・・ザフトがナチュラルである自分達をどう扱うかはわからないが。

だが少なくとも、キラをこれ以上戦わせなくて済むだろう。

なにしろ、全員コーディネイターなのだ。



とにかく、これがザフトによるものならば。

この外に、求める相手がいることになる。



「キラはどうしてるかしら?」

「今、ストライクに繋げる。

 ・・・ストライク、キラ・ヤマト。

 聞こえるか?

 こちら、カガリだ。

 キラ?」



返事を待つが、応答が無い。



「いないのか?

 まさか、基地の中に・・・」

「待って。ねぇ、聞こえない?

 微かに、声がしてるわよ」



カガリがパネルを操作し、音量を上げた。



『あ・・・らん、・・・ら・・・、タス・・・』

「キラ!キラなんでしょう。

 返事をして、キラ!」

『・・・・・・・・・。

 ダ・・・レ・・・?』

「ミリアリアよ、わかる?」

『みりぃ?・・・モウヤダ・・・

 あすらん、ドコ?

 あすらん・・・』

「キラ・・・」

「あいつら・・・!

 キラに何したんだっ!?」



キラが映像を繋げないため、音声しか伝わらない。

それでも、キラが泣いているのはよくわかった。



ミリアリアが突然、身を翻して出て行こうとする。

もちろん、キラのもとへ。

だが、トールが止めた。



「ダメだ、ミリィ」

「行かせて!キラが泣いてるわ!」

「今行っても、なにも出来ないぞ!」

「放っておけるわけ、ないでしょ。

 あんなに、辛そうに泣いてるのよ!?

 第一、あの状態で、逃げられないわよ!」



キラを連れて逃げなければ意味が無い。

キラを、助けなければ。



「待て。キラの言っているアスランって知ってるか?」

「なにを、・・・え?アスラン?」

「そうだ。キラがずっと呟いてるだろう。

 助けてくれ、と。

 お前ら、知らないか?」



ミリアリアとトールは顔を見合わせた。

もちろん2人は知っている。

そう、その名前は・・・



「キラが月にいた時の親友で、幼馴染みだわ。

 プラントに引っ越して、3年間音信不通のまま、って」

「プラント?本当か?」

「ああ。キラはそう言ってたよ」



2人の説明にちょっと考えた後、カガリはもう一度キラに呼びかけ始めた。



***



「あすらん、あすらん・・・」



アスラン、どうすればいいのかな?

僕、みんなを守るって言ったのに。

もう、できないよ。

もう、ヤダよ・・・。

でもそしたら、ミリィもトールも死んじゃうかもしれない。

アスランが、2人を殺しちゃうかもしれない。

そんなの、嫌だよ・・・。

助けて・・・



『キラ。キラ、プラントに行かないか?』

「ぷらんと?」



平常心を失っているキラは、それがカガリの声だという認識がない。

いや、知り合ったばかりのカガリのことは意識から外れていた。

しかし、その声は、不思議とキラの心に優しく響く。



『アスランが、いるだろう?』

「あすらん・・・」



・・・アスランに会える?



*** next

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