偽り−14


キラは女の子


「ほんとうに、女とはな・・・」



嫌な笑いを浮かべたガルシアが、身動きのとれないキラに顔を近づける。

怖気の走ったキラは身を引こうとしたが、果たせない。



「ヤメ・・・!」



目を閉じ、顔を背けるキラの顎を掴み、ガルシアが口を合わせてきた。

キラの唇を割り、舌を差し入れてくる。



あまりの気持ち悪さに、キラは一瞬気が遠くなる。

が、すぐに我に返り、その舌を思いっきり噛んだ。



「くっ・・・!」



痛みにやっとガルシアが離れる。

キラは、ペッペッと唾を吐き、咳き込む。

自分が汚されたようで、吐き気が込み上げてきた。

しかしまたも、胸ぐらを掴み上げられる。



「ふんっ。

 よくもやってくれたな」



キラは口をきくのも嫌で、ただ睨み付ける。

ここで、目を逸らしては、また同じことになってしまう。

だが、次にガルシアが起こした行動に、キラの目が驚愕に見開かれた。



キラの襟元に両手を掛けたと思うと、一気に引き裂いたのだ。



「ヤメテ・・・!」



キラの気持ちが挫ける。

ずっと男として育ち、女に戻ってからも、同じように振る舞ってきたキラだ。

こんな風に、女として恐怖を感じたことなど、一度もない。



「オネガイ、ヤメテ・・・」



涙を流し、震えだしたキラに、ガルシアが満足したように笑った。



「これ以上、されたくなかったら、逆らうなよ。

 そうすれば、大切にしてやるさ。

 貴重な、裏切り者のコーディネイターだ。

 いいな?」

「ハ・・・イ・・・」



あすらん、タスケテ・・・



***



キラはストライクのコックピットに押し込められた。

そして、目の前には銃口を向ける兵士。

その肩越しに、技術者らしき男がキラの手元を覗き込んでいる。



キラがあまりに怯える為、ガルシアは彼らに任せ、自室に戻った。

・・・まあ、いたところで技術的なことはわからないのだが。

とりあえず、ロックを解除させないことには始まらない。



キラは震えながら、キーボードを叩く。

いつものキラからは考えられないほどに、ゆっくりと。



怖かった。

銃口が、ではない。

そんなものは、もうキラの目には入ってはいない。

目の前の見知らぬ男達。

彼らが傍にいると思うだけで、体の震えが止まらない。

強ばった手が、思うように動かない。



だがそれでも。

ナチュラルから見れば、遅い、というほどではない。

キラの作業を身ながら、技術者は感嘆のため息を漏らした。



「すごいな・・・」



その声に、キラがビクッとして手を止め、顔を上げる。

怯え、涙の跡の残る顔を。



初めてキラと目を合わせた技術者は、驚きの表情を浮かべる。

彼は、先ほどのやり取りを見ていなかった。

だから、キラが何に怯えているのかわからない。

そして、キラが顔を上げたことで、その胸元が見えた。

服が、破られている。

それもあきらかに力任せに引き裂いてある。

掻き合わせてはあるが、白い素肌が見えた。



「なんでもない。続けてくれ」



優しく言うと、キラが詰めていた息を吐き出すのがわかった。

作業を再開するキラを、痛ましそうに見つめる。



いくらコーディネイターだからって。

なんだってこんな少女に、なんてことを・・・!



技術者は見ていられず、下へ降りた。

その時。



轟音が鳴り響いた。

それも、連続して、だ。



それには、そこにいた全員が驚いた。

キラを見張っていた兵士も。

役目を忘れ、思わずキラに背を向ける。



キラはその隙を見逃さず、力一杯、兵士を蹴り落とした。

そして素早く、コックピットを閉じる。

外からの開閉もロックする。



これでここは、安全・・・



ホッとしたキラは、涙を溢れさせた。



*** next

キラ、ごめん
キラを泣かせるのは好きだが、こういうのはちょっと・・・
他の方が書いたのなら、わりと平気なんですけど
せめて、相手がもっと見目良い人だとよかったよぉぉぉぉぉ
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