偽り−13


キラは女の子


「どうしよう、キラが!」



残された面々は、キラが心配でならなかった。



「まずいよ。

 キラがコーディネイターだって知られちゃって」

「この艦にいるより、まずいだろうな」

「どうしたら、助けられるの?」

「今は無理だ。

 なにか、事でも起こって見張りの気が逸れないとな」



冷静そうに言いながら、カガリの頭の中は、焦りでいっぱいだ。

キラのことを考えると、なぜか焦燥感を憶える。



馬鹿な。

会ったばかりのやつのことで、なんで私が・・・。

いや、キラはオーブ国民で、私が守るべき一人だ。

だが・・・。



「それに、あんな風に拘束されたら・・・」

「キラが女だってバレちゃうかもしれないわ」

「俺達が、キラの足枷になっちまう。

 いや、既にそうなんだけど」



3人は、クルー達から離れたところで、小声で話している。

クルー達も、民間人の彼らがショックを受けているだろうと、放っておいてくれていた。



「なぁ、二人とも」



しばらく考え込んでいたカガリが、二人に話しかける。



「キラのために、危険を冒す覚悟があるか?」

「もちろんよ!」

「当たり前だろ!」



間髪入れずに答える二人から、キラへの思いが見えた。

知らず、カガリに笑みが浮かぶ。



「私にだってわかってるわ。

 キラがあれに乗ったのは、私達がこれに乗ってるからよ。

 だから、・・・ううん、違うわ。

 キラが守ってくれたから、私達がどうにかするんじゃないわ。

 キラは大切な友達なんだもの」



ミリアリアは、自分が感じる恐怖に微かに手を震わせている。

それでも、強いて笑顔で答えた。



「そうさ。まだ2年だけど。

 キラにとっては、月に居た時の親友が一番なのも知ってるけど。

 それでも、俺達はキラが大好きなんだ。

 なにもしないで待ってられるかよ」



トールもミリアリアも、優しいキラをよく知っている。

友人として、そのキラをなんとしても助けたい。



「ああ、そうだな」

キラは、いい友達を持っているな。



カガリは、ちょっとキラが羨ましいと思った。

本国には、カガリを守るために命を懸ける者達がいる。

だが、こんな友人は、いない。

それも当然なのだ。

カガリの周りにいたのは、同じく有力者の子息達。

彼らも、己の身を第一に考えなければならない立場にある。



「でも、カガリはいいの?

 カガリにとっては、キラも私達も他人でしょ?」

「私も、キラが好きだよ。

 少ししか話してないが。

 それに、忘れてないか?

 私は、アスハだ。

 オーブ国民を守らなければならない」



***



「それで、どうすればいいの?」

「そうだよ、それを聞かないと」



一段と声を落とし、顔を寄せ合って話す。



「いいか。今すぐ動くことはできない。

 だけど、必ず隙ができる。

 いつかはわからないが・・・。

 艦長達が何か起こすか、ここにいる奴らだって。

 信じて、待つんだ。

 そして・・・」



綿密な作戦ではない。

そもそも、何がどうなるかもわからない状態だ。

それでも、ミリアリアもトールも真剣に聞く。

カガリには、二人にはない知識や経験があるのがわかる。

キラを好きだと言ったカガリを、頼るしかなかった。



***



キラが連れ去られて、どのくらい経ったのか・・・。



アークエンジェル内に、轟音が響き渡る。

突然のことに、狼狽える見張り達。

アルテミスの兵達は・・・非常事態に慣れていなかったのだ。

アークエンジェルのクルー達はその隙を見逃さない。

見張りを倒し、皆、己の持ち場に向かって走った。



ミリアリア、トール、カガリの3人は、格納庫へと。



*** next

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