偽り−12


キラは女の子


「よーし、そのままだ!

 動くな!」



フラガの予感は的中した。

アルテミスに入港した途端、乗員が拘束されたのだ。



マリュー、ナタル、フラガを除く全てのクルーが食堂に集められた。

もちろん、キラ達4人も。



アークエンジェルやモビルスーツを開発したのは、北大西洋連邦。

それに対し、このアルテミスはユーラシア連邦。

共に地球連合軍なのだが・・・。



「カガリが言ったとおりだな」

「うん。・・・何も足の引っ張り合いしなくてもいいのにね」

「これで、もう安心できると思ったのに」



集められ、銃で監視されているが、それだけだ。

何の説明もなく・・・。

皆、不安を仲間達との会話で紛らわそうとしている。

キラ達も、小声で話していた。



***



「モビルスーツのパイロットと技術者はどこだね?」



ここアルテミスの司令官・ガルシアが、居丈高に訊いた。



それはどちらも、キラのことなのだろう。

しかしキラにそのつもりは無いので、進み出たりはしない。

また、クルー達もここに不審を抱いており、答える気はなかった。

クルーの一人が立ち上がる。



「なぜ我々に訊くんです?

 艦長達が言わなかったからですか?

 それとも、訊けなかったからですか!?」

「なに!?」

「まぁ、待て」



激昂する副官を、ガルシアは止めた。

そして、面白そうに見回す。



「女性がパイロットということもないと思うが・・・」

「痛い!」



いいながら手近にいたミリアリアの腕を掴み、立ち上がらせた。



「この艦は艦長も女性だということだしな」



にやにやと笑っているガルシアが、本気で言っていないことは明白。

そもそも、ミリアリアは私服を着ている。

わからないはずが、ない。



「ミリィ!」

「ミリアリア!」

「止めてください!

 あれに乗ったのは僕です」



キラの周りのクルー達が抑えようとしたが、キラは自ら名乗り出た。

ミリアリアがあんな目に遭わされているのを放っておくことなどできない。



「坊主、彼女を庇おうという心意気は買うがね。

 あれは、お前のようなヒヨッコに扱えるような・・・」

「僕は、コーディネイターですから。

 さぁ、彼女から腕を放してください」

「コーディネイター、だと?」



キラに従ったわけではなく、意外なキラの台詞に、ガルシアが手を放した。



「お前がか?」

「馬鹿な!我が軍にコーディネイターなどいるはずが・・・!?」

「ご覧の通り、僕は軍人ではありませんから。

 ヘリオポリスの学生ですよ」



ガルシアの、アルテミスのやりようにキラは怒っている。

理性が、こんな突っかかるような言い方はまずいと訴えていたが・・・。

我慢がならなかった。



***



「OSのロックを外せばいいんですか?」



格納庫のストライクの前に連れてこられたキラは、そう訊いた。



「まずは、な」



ガルシアが、何を思ったかキラに手を伸ばす。

指をキラの顎下にあて、クイッと上向かせた。



「ふん。さすがに整った顔をしているな。

 女かと思ったぞ」

女なら、いろいろ面白かったんだがなぁ。



と、キラがその手をたたき落とす。

それを見て、副官がキラの胸ぐらを掴んで・・・



目を見開いた。



「お前、女?」

「なに!?」

「放せ!」



キラは振り払おうとしたが、周りにいた兵士達に両腕両肩を押さえつけられてしまう。

これでは、いくらコーディネイターの力でも、どうしようもなかった。



*** next

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