偽り−11 | ||
キラは女の子 | ||
『同じコーディネイターのお前が。 なぜ俺達と戦わなくちゃいけないんだ!?』 通信機から聞こえるアスランの言葉。 キラは、自分も同じ言葉を返したかった。 なぜ、自分と彼が戦うのか、と。 『やめろ!キラ! お前がなぜ地球軍にいる!? なぜナチュラルの味方をするんだ!?』 「・・・僕は地球軍じゃない! けど、あの艦には友達が乗ってるんだ!」 ナチュラルもコーディネイターも、キラには関係ない。 ましてや、地球軍なんかどうでもいい。 「君こそ、なんでザフトになんか? 何で戦争をしたりするんだ!? 戦争なんか嫌だって、君だって言ってたじゃないか! その君がどうしてヘリオポリスを!」 『状況もわからぬナチュラルどもがこんな物を作るから!』 「ヘリオポリスは中立だ! 僕だって・・・! なのに・・・!」 それ以上、二人が話していることは出来なかった。 ストライクに、デュエルが襲いかかってくる。 アスランのイージスとは違う。 デュエルは本気でストライクを攻撃してきていた。 キラは、ストライクは避けるのがやっと。 とても、相手を倒すどころではなかった。 しかしその時、双方に帰還信号が発せられる。 ゼロによる奇襲が成功し、前方のザフト艦が被弾したのだ。 安堵のため息を漏らしたのは、キラだけではなかった。 *** 「もう、終わったぞ。 出て来いよ、坊主」 ストライクから出てこようとしないキラを心配し、フラガがコックピットに入った。 と、フラガが目を見張る。 「坊主、お前・・・! パイロットスーツを着なかったのか!?」 シートに座ったまま、顔を両手で覆っていたキラは、大声に驚いて思わず顔を上げた。 その目に、こちらに伸ばすフラガの手が映り、払いのける。 「イヤだ!」 フラガはキラの体を固定しているベルトを外してやろうとしただけだった。 だが、キラの目に浮かぶ涙に、狼狽える。 「あ・・・、と、その」 いや、涙にも困ったのだが、それ以上になぜか胸が騒ぐのだ。 「そこ、退いてください」 フラガが狼狽している間に、キラは自分で涙を拭き、ベルトを外している。 これ以上、ここにいたくなかった。 キラに言われるまま横に退いたフラガだが、通り過ぎるキラの腕をさっと掴んで止める。 「放して!」 「あ、悪い・・・」 キラの拒絶よりも、その思ったよりも細い手首に驚いて、フラガは手を放した。 「なんですか?」 キラの涙声が、フラガの胸をまたも騒がせる。 「次は、パイロットスーツを着ろ。 いいな?」 「次なんて、ありません。 もう、ほんとうに、イヤです! これで、アルテミスに入れるんでしょう? だったら、問題ないじゃないですか。 いい加減にして下さい!」 はぁはぁと、怒鳴ったせいで息を切らせながら、キラが訴えた。 先の説明でも、その通りの筈だ。 しかし、フラガの見解は違う。 「そのことだが・・・。 ストライクにロックを掛けておいてくれ」 「ロック?」 「ああ、そうだ。できるだろ。 お前以外、起動できないように、な」 「なぜです?」 「いや、俺の考え過ぎならいいんだけどな。 もしかしたら、艦長達の思惑通りにはいかないかもしれない」 *** 「って、フラガ大尉が言ったんだけど」 「地球連合軍、ったって一枚岩じゃないってことさ」 「カガリ?」 キラ、ミリアリア、トールの3人が、不思議そうにカガリを見た。 ただの学生である彼らには、政治向きのことなど考えられない。 しかし姫として育ったカガリには、わかることもある。 「アルテミスも安全とは限らないらしいな・・・」 *** next |
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