偽り−10


キラは女の子


やはり、あの時見たのは、キラだったのだ。

それを確認したことで、アスランの頭は混乱してしまう。



なぜだ、キラ?

なぜ君が地球軍にいるんだ?



ヘリオポリスの崩壊の衝撃で、ストライクを、キラを見失ってしまった。

やっと見つけた、キラを。



なんとしても、取り戻さなければならない。

キラはコーディネイターだ。

地球軍が利用しているに違いない。

お人好しのキラを、あいつらは騙しているんだ。



優しい、キラ。

通信機越しに見たキラは、相変わらず、美しかった。

昔から思っていたが、まるで少女のように。

だがそれを言うとキラが嫌がったので、口にはしなくなっていた。

あの別れから、3年。

顔を見、声を聞いただけなのに。男だとわかっているのに。

アスランの心が、体がキラを欲する。



「キラ、待っていろ」



***



アークエンジェルは、友軍の基地の一つ、アルテミスに向かっていた。

ザフト軍に見つからないよう、慎重に。



しかしクルー達の願い虚しく、艦内にまたも警報が鳴り響く。



***



『キラ・ヤマト!早く来い!』

「イヤです!僕はもう・・・っ!」

『じゃあ、何もせずに死ぬか?』

「な・・・」

『死にたくなきゃ、やれることをやるんだ。』

「!」



ブツッと切れた通話機を、キラは睨む。

だが、それで何が変わるわけでもない。



「モビルスーツが動かせるからって・・・」

戦争ができるわけじゃない。



それでも、自分がこの艦を守らなくちゃいけない。

フラガに言われずとも、キラにだってわかっているのだ。



覚悟を決め部屋を飛び出したキラは、しかしすぐに立ち止まる。

部屋の前に、友人達が立っていた。



「キラ、いいのよ、戦わなくて」

「そうだよ、キラ。

 俺達は軍人じゃない。

 戦う必要なんか、ないんだ」

「お前は、オーブ国民だ。

 民間人なんだ。

 戦争は、やりたい奴らにやらせておけばいい」



口々に、キラを引き留めようとする。

彼らとて、この艦が一隻で抗えるとは思っていないだろうに。

キラがストライクで出なければ、彼らも艦と共に沈む。

それでも、と。



キラはずっと感じていた胸の痛みが薄らいだ気がした。

そう、この友人達を死なせたくない。

自分の生死のためではない、彼らを死なせないために。



「ありがとう。でも、僕は行くよ」



***



『モビルスーツ4機接近。』



ストライクに乗り込んだキラは、艦橋からの報告を聞きながら、起動させる。



『デュエル、ブリッツ、バスター、そしてイージスです。』



キラは、自分の顔が強ばるのがわかった。



イージス!

アスラン、また君なの!?

どうして・・・?



『進路クリア。ストライク、どうぞ。』

「ストライク、・・・行きます」



***



ゼロは、隠密先行で前方のザフト艦に迫っている。

ストライクは、その奇襲が成功するまで、アークエンジェルを守らなければならない。



こんな作戦、うまくいくんだろうか?



不安なキラの目に、敵機が捉えられた。



「あのモビルスーツ・・・。

 ・・・アスラン!?」



後方のザフト艦から飛び出したイージスが、ストライクに迫る。

イージスが振り下ろす剣を、キラもストライクの剣で受けた。



『キラ!』

「アスラン!?」



*** next

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