偽り−9 | ||
キラは女の子 | ||
「キラ、ヘリオポリスが崩壊したって?」 「本当なの?」 帰還したキラが友人達の待つ部屋に戻ると、トールがそう問いかけてきた。 だが、キラが答えずとも、その顔色を見れば一目瞭然だろう。 「父さん、母さん、無事かな・・・?」 「大丈夫だよ、ミリィ。きっとね。 そう信じよう」 「僕は、守れなかった・・・」 「キラ!」 「違う・・・。違うわよ、キラ。 なにもかも、自分のせいにしては、ダメよ」 「でも僕は戦えなかった・・・」 「違うよ、キラ。 キラは僕らを守ってくれたんだろう。 コロニーを壊したのは、地球軍とザフト軍だ」 辛そうに顔を歪めるキラを、ミリアリアとトールは懸命に説く。 そんな3人とは裏腹に、カガリは壁に拳を打ち付けた。 「地球軍はっ!サフト軍はっ! よくも、オーブを・・・っ!」 *** 「キラ、大丈夫かな・・・?」 「私達に心配かけまいとしてるだけよ、あれは」 コロニー崩壊時に気を失ったキラが次に見た光景が、その残骸だったという。 ミリアリア達にとってもヘリオポリスがあんなことになったのはショックだ。 しかし、それを目の前で確認してしまったキラは・・・。 辛そうなキラを見るに見かねて、ミリアリアがキラをベットに押し込んできたところだ。 ミリアリアとトールは二人して、気が重そうに、ため息を吐く。 「そういえば、君のことカガリって名前しか聞いてないけど」 「私達もちゃんと自己紹介してなかったわね」 気持ちを落ち着かせた後、やっと3人はそれに気づいた。 「しばらく一緒にいることになりそうだし」 「私はミリアリア・ハウ。 トール・ケーニヒと、・・・彼女がキラ・ヤマトよ。 今更だけど、カレッジの学生で、カトー教授のゼミで一緒なの」 「私は・・・」 カガリはちょっと躊躇ったが、本当のことを言うことにする。 「私は、カガリ・ユラ・アスハだ」 「アスハって・・・」 「代表首長の・・・」 「ああ。ウズミ・ナラ・アスハの娘だ。 悪いが、他言無用に頼む」 そう、彼女の素性は伏せて置いた方がいい。 地球軍が、どう利用するかわからない。 キラを無理矢理戦いに赴かせた彼ら。 そんな相手を信用することなどできなかった。 「私は、こうなるのを止めたかったんだ。 噂を聞いて、確かめずにはいられなかった。 カトー教授に相談したくて、あそこに行った。 お前達は、そのせいで巻き込まれてしまったな。 すまない」 「噂って?」 「ヘリオポリスで、地球軍の兵器開発をしている。 そう聞いた。 だが、まさかこんなものとは思わなかった」 役に立たなかった自分が、カガリは悔しかった。 「でもさ、地球軍ってなんだってモビルスーツなんか作ったんだろ?」 「そりゃ、ザフトに対抗するためでしょ」 「いや、それはそうだろうけどさ。 だって、動かせなきゃ意味無いじゃんか」 「その上、奪取されてしまったのよねぇ」 3人は顔を見合わせる。 「そのせいで、キラが苦しむなんて、間違ってるわよ!」 *** ベットに入ったキラは、アスランを想う。 「アスラン、やっと会えたのに・・・」 あの一瞬の邂逅が忘れられない。 キラの名を呼ぶ、その声。 「なんで、君がザフトに入ってるの? なんで、僕は君と対峙なんかしたの?」 一緒にこの艦に乗った友人達には言えなかった。 どうして言えるだろう? キラが話して聞かせていた親友が、この艦を襲ってきたなどと。 その結果が、ヘリオポリス崩壊だなどと。 「アスラン。・・・アスラン。 アスラン、アスラン、アスラン・・・」 キラは呪文のように、アスランの名を唱える。 涙を流しながら・・・。 *** next |
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ミリアリアの心配とは違い ひたすらアスランのことで頭がいっぱいなキラです・・・ |
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