偽り−8


キラは女の子


「どうした、キラ!?」

「うん、ちょっと」



フラガ大尉と名乗る男に連れて行かれたキラが、一人で戻ってきた。

歯を食いしばり、何かに耐えるような表情をして。



「ちょっとじゃないでしょっ!

 また、なんか言われたの?」



心配そうに見つめる友人達に、キラはふっとその表情を緩めた。

今のキラには、彼らだけが味方だと思える。

その彼らに、言いたくはなかった。

しかし。



「あれに乗れって言われたんだろう?」

「「「!」」」

「やはりな」



キラの顔色から答えを読んだカガリは、怒りを露わにする。



「何を考えているんだ、地球軍は。

 民間人に戦闘をさせるつもりかっ!」

「ほんとなの、キラ?」

「言うこときくことないぞ、キラ!」

「みんな・・・。

 ありがとう、みんな。

 でも、この艦が墜ちたら・・・。

 モビルスーツを動かせるのは、僕だけなんだって」

「だからって・・・」



ミリアリアが言いかけた、その時。

警報が鳴り響いた。



「この艦を早くコロニーから出さないと。

 街がどんどん破壊されてしまうことは確かなんだ。

 やってみるよ」

「「キラ!?」」



みんなを死なせたくない。

警報を聞いたキラは、決断した。

駆け出しながら、ふと思い出して、もう一言付け加える。



「僕のこと、男だって思われてるんだ。

 みんなも、そのつもりでいて」

「ちょっと、キラ!」



***



「男だなんて、キラ、どうして?」

「女の子だって言えば、乗らなくて済むかも・・・」

「いや」



戸惑うミリアリアとトールをカガリは諭す。



「地球軍には、コーディネイターを憎む人間が多い。

 キラがそうだというだけで、あのざまだ。

 憶えているだろう?」

「ええ」

「あたりまえだろ」

「なら、キラが女とわかれば、卑劣な真似をする輩が出るかもしれない。

 ・・・わかるか?」

「そんな、いくらなんでも・・・」

「いや。ミリィ、彼女の言うとおりかもしれないよ」

「考えたくはないがな」



***



アークエンジェルから飛び出したストライクのレーダーに、敵機が表示された。

モビルスーツ・ジンが数機、それに・・・



「イージス!?」



ジンからの砲撃に反撃しながら、ストライクはアークエンジェルから離れていく。

気がつけば、ジンはすべてアークエンジェルへ。

ストライクの前には、イージスが。



「攻撃、してこない・・・。

 なぜ?」

『キラ・・・』



通信機から聞こえた、キラの名前。

キラは息を呑んだ。



『キラ・ヤマト・・・』



アスラン?

まさか、そんなはずは。

でも。



「アスラン・ザラ?」



半信半疑で、大切な親友の名を呟いたキラの声に、相手も息を呑むのがわかる。



『やはり、キラ。キラなのか!』

「ほんとうに、アスラン!?

 なぜ・・・、なぜ君が!?」

『お前こそ、どうしてそんなものに乗っている!?』



キラは混乱する頭を振り、説明しようとした瞬間。

コックピット内に警報が鳴り響いた。



「な、なに?いったい・・・、くっ!?」



キラが状況を把握する暇なく、ストライクが気流に流される。



『キラ!』



アスランが自分を呼ぶ声を聞きながら、キラは気を失った。



*** next

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