偽り−7


キラは女の子


「さっきは、ありがとう、みんな」

「何、言うんだよ、キラ。

 助けてくれたのは、キラの方だろ」

「そうよ。キラが来てくれなかったら今頃・・・」



怯えたように微かに震えたミリアリアの肩をトールが抱く。



ミリアリア達3人は、キラと同じく避難所を見つけられず屋外に出ていたのだ。

キラはストライクの手に彼らを乗せて移動。

モビルスーツ部隊が退却したのを見計らい、マリューは戦艦・アークエンジェルに通信を繋ぎ、着艦を果たした。



これでとりあえず安心、と思った彼らだが・・・

モビルスーツから降り立ったキラに、銃が向けられたのだ。



コーディネイターだから、と。



その銃口から、トールとミリアリアが庇ってくれた。



「それにしても、ひどいよな、あいつら」

「地球軍が戦っているのは、プラントだからな。

 あいつらは、コーディネイターは敵だって思いこんでるのさ」



憤慨するトールに吐き捨てるように答えたのは、ずっと沈黙を通していた少女・カガリだった。



「つか、そもそも、なんでこんなことになってるんだ?」

「マリューさん、あのストライクに乗せてた人ね。

 あの人は、この艦とあのモビルスーツのせいだって言ったよ。

 ・・・ここで作ったんだって」

「そうだ。オーブ政府が国民を裏切ったのさ。

 中立のはずなのに。

 地球軍に荷担するなどっ!」



***



アークエンジェルの艦長室。

主だった士官が戦死し、残った尉官3人が顔を揃えている。

艦長となった、マリュー・ラミアス大尉。

副官となった、ナタル・バジルール中尉。

モビルアーマー・メビウスゼロのパイロット、ムウ・ラ・フラガ大尉。



「どうする?

 あいつら、絶対また仕掛けてくるぜ?

 だが、俺の機体はすぐには直らない。

 いくらこいつが最新鋭でも、コロニー内じゃあ、戦えないだろ?」

「フラガ大尉には、あのストライクを・・・」

「無理だね」

「「?」」



マリューの台詞を遮り、きっぱりと断言するフラガに、女性二人は疑問の眼差しを向けた。



「パイロット候補生達も、一歩動かすのすら四苦八苦してたんだぜ?

 あんなもん、ナチュラルには満足に動かせない。

 言いたくはないが、俺にも出来ない。

 あの坊主がコーディネイターだと思ったのはそれでだよ」



顔を見合わせて困惑する二人に、フラガはさらに言葉を足す。



「降服か、戦うか。

 戦うなら、あの坊主の協力が絶対に必要だな」

「馬鹿なっ!これ以上、コーディネイターに大事な機体を扱わせるなど・・・っ!」

「どっちみち、このままじゃ宝の持ち腐れだ」

「しかし・・・っ」

「フラガ大尉の言うとおりですね」

「艦長!」



マリューまで何を、とこちらを見返すナタルに、マリューは肩を竦めて見せた。



「降服は、できません。

 私達は、この艦と、せめてストライクは軍本部に持ち帰らねばなりません」

「じゃあ、あの坊主にやらせるしかないな」

「彼らは、軍の機密に触れました。

 上の許可無く、解放することはできません。

 彼らの命も掛かっているのです。

 協力して頂きましょう」



どこか辛そうに述べるマリューに、フラガが笑いかける。



「ま、そんなに気負いなさんな。

 話は俺がしてきてやるから」



***



「冗談でしょう。

 僕はこれ以上、あんなものに乗りませんよ」

「ザフトはまた襲ってくる。

 戦わなきゃ、死ぬだけだ」

「そんなの、あなた方の勝手でしょう。

 僕らをすぐに降ろしてください。

 そして、戦争でもなんでも、コロニーの外でやってください!」



睨み付けてくるキラを見やり、フラガはため息を吐いた。

そして、声を低くして、告げる。



「君らは、軍の機密に触れた為、身柄を拘束される。

 艦を降りることはできない。

 この艦にある戦力は、俺のゼロとストライクだけだ。

 ゼロは先の戦闘で故障して当分直らない。

 坊主。君が戦わなければ、君の友人達も死ぬことになるな」



坊主、の一言で、キラの性別が誤解されているのがわかった。

しかしそんなことは、今はどうでもいい。

問題は、その内容・・・。



「あなた達は、卑怯だ!」



それは、キラにとって脅迫でしかなかった。



*** next

カガリもアークエンジェルに乗せちゃいました・・・
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