偽り−6


キラは女の子


「今のは、キラか?」



アスランは地球軍のマリュー達を追って格納庫に入ってきていた。

イージスに乗ろうとした男をそっと倒し、代わって乗り込んだのだ。



ストライクという、もう一機のモビルスーツからの通信に映っていたのは。

先ほど見かけた地球軍の兵士ではなかった。

茶色の髪、紫の瞳の、まだ少年のような・・・



「いや、そんなはずはない。

 キラが嫌いな戦争に関わるはずがない」



否定するその言葉とは裏腹に。

だが、アスランには、否定しきることができない。



俺が、俺がキラを見間違えるはずがない。

あの、紫色の瞳。

アスランが心惹かれる、あの瞳。

それに・・・



相手も、アスランを見て驚愕しているように見えた。



交信中、キラらしき人物とは別人の声がしていた。

あれが、地球軍の兵士だろうと思う。



「キラ・・・、キラなのか?」



***



アスラン、君じゃないよね?

君も、戦争は嫌いだって言ったよね?

君のはず、ないよね?



キラは頭を軽く振って、嫌な考えを振り払った。



考えるのは、後だ。

今はこの人を、マリューさんを治療できるところまで連れて行かないと。



マリューは、先ほど無理に動いたせいか、一段と辛そうである。

彼女から指示をもらいながら動かすのは難しいだろうとキラは判断した。



「システムを確認しないと・・・」



キラはコックピット内を見回し、キーボードを見つける。

引き出し、プログラムを開いていった。



「なにこれ。こんなOSでこんな機体を動かすの?

 無理にきまってるじゃないかっ!」



あまりにも稚拙なそれに、キラは苛つく。

チラッとマリューの様子を伺うが、キラの言葉が聞こえている様子は無かった。



「ちょっと、書き換えさせてもらいますよ」

どうせ聞いていないでしょうけど・・・



呟いたキラは、物凄い勢いでキーボードに指を滑らせていった。



***



ストライクを立ち上がらせたキラは、すぐ横にあるイージスをうかがう。



あっちも、システムを書き直しているんだろうな。

あのまま、まともに動かせるはずないから。

乗っているのがアスランじゃないって確認したいけど・・・



後ろ髪を引かれる思いで、キラはストライクを建物から出した。

と、キラは息を呑んだ。



「なに・・・?なんでこんな!?」



広いモルゲンレーテの敷地内の建物が、破壊されている。

いや、遠く、住宅地の辺りでもいくつも火の手が上がっていた。

なにより・・・



「戦艦?それに、モビルスーツ!?

 あれは、ジンだよな、ザフトの。

 だとすると、あの白い戦艦は地球軍?」

「そうよ・・・」



いつから気がついていたのか、マリューがキラの疑問に答える。



「なんだって、あなた達やザフト軍がここにいるんです?

 ここは、中立国オーブのコロニーでしょう」

「あれと、これのせいよ。

 あの戦艦とこのモビルスーツはモルゲンレーテの協力で開発したの。

 ここで作っていたのが、あいつらに知られたんだわ」

「そんな・・・!」

「とにかく、ここは危険だわ。

 イージスが動く前に、他へ移動してくれる?

 こんなところで、・・・いえ、あなたに戦闘をさせるわけにはいかないわ。

 隠れて、味方と連絡をとらないと」



キラにもいろいろ言いたいことはあったが、今それを言っても始まらないだろう。

諦めて、マリューの指示どおりに機体を歩き出させた。

なにしろこんな大きな機体を動かすのは初めての経験。

キラはモビルスーツで何かを踏みつぶしたりしないよう、慎重に進ませた。

すると、足下を映したモニターに、いくつかの人影が見える。

素早く拡大させると、キラは目を見開いた。



「ミリィ!トールも!」



それは、先ほどキラが見失った、友人達の姿。

もう一人の少女も含め、3人が怯えたようにこちらを見上げていた。



*** next

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