偽り−3


キラは女の子


「ほんと、もったいないわよねぇ」

「は?」



モルゲンレーテに着いた三人は、エレカを降り、研究室を目指す。



「キラよ、キラ。

 キラって、綺麗でしょ。

 女の子らしい格好すれば、すっごい美女になると思うのよね」

「あ、俺もそれ見たい!」

「やだなぁ、またそれ?

 ミリィもトールも諦め悪いよ。

 僕はこういうのがいいの」



二人とも、出会った時からずっと言ってるんだもんな。



「でも、はっきり言って、変よそれ。

 ボーイッシュな服でもいいけどさ・・・。

 せめてもっと体にぴったりしたのとか」

「いや。やっぱり襟元のあいたミニスカート・・・うっっっ」



ミリアリアに頭を殴られ、トールがうめいた。



「ま、こういうバカは置いとくとして」

「なんだよ、ミリィ。

 俺は正直に言っただけだぞ。

 つーか、クラスの男子の総意だって」

「う・る・さ・いっ!

 そういうこと言うと、キラが嫌がるでしょうが!」



懲りないトールはまたミリアリアに殴られている。



「くすっ。もういいよ、ミリィ。

 トールに悪気は無いんだし。

 一応、褒めてくれたんだよね?」

「そね。無視しよう、無視。

 で、さ。キラってさ、プロポーションもいいのよね。

 そんな体の線を隠すようなのばっかり着ていてわかりづらいけど」

「最初、男だと思ったよ、俺。っつうか、みんな。

 一人称も僕だしさ。

 うっかり抱きついちまったしなぁ。///」

「なぁに、顔を赤くしてるっ!

 ああでも、キラもキラよね。

 まるで平気な顔してたのよねぇ」



そう、初対面でキラを気に入ったトールは、キラに乱暴に飛びついたのだ。

が、さすがにその体のやわらかさに違和感を得て・・・。

おそるおそるキラに尋ねてやっと真実を知った。

真っ赤な顔で飛び離れたトールとは裏腹に、キラは不思議そうに見返しただけである。



「さすがに、今はそんなことはないでしょうけど」

「どうかな・・・案外平気かも」

「あ、じゃあ俺が・・・うっっっ!

 い、痛いよ、ミリィ。今本気で叩いたろ・・・」



***



研究室内に、見慣れない少女がいた。



「君、誰?」



三人は顔を見合わせて、トールが代表して訊く。



「ここで待つように言われた。

 カトー教授に用がある」

「あ、そう?だけど、なぁ・・・」

「当分出てこないんじゃないかしら」

「その部屋に入ると、教授、時間忘れるから」



三人が口々に言うのに、彼女は顔を顰めた。



「そう、なのか?」

「うん。・・・あれ?

 君さぁ、なんか、キラと似てないか?」

「きら?きらってなんだ?」

「キラ、並んでみろよ。

 君もその帽子外して・・・ほらv」



キラとその少女はよく似ていた。

顔立ちと、背格好も。

色は違って、キラが茶髪紫瞳なのに対し、金髪金瞳だ。



「わぁ、ほんと。キラのが柔らかい感じがするけど。

 そうね、ヘアピースとカラーコンタクトで入れ替われるかもよ」



見比べられている二人が、互いを見る。

と、金髪の少女が顔をしかめた。



「おい、ちょっと待て。

 なんで私が男と似てると言われなければならない?」

「男?」

「あら、キラは女の子よ、こんな服着てるけど」

「・・・ほんとか?」



まっすぐにキラと目を合わせて訊いてくる少女に、キラは苦笑で答え、話を戻す。



「急いでいるんじゃなかったら、明日出直した方がいいよ」

「え? あ、ああ、いや。

 ・・・今日中に済ませたいんだが」

「うーん。気の毒だけど、気長に待つしかないかな」

「防音した部屋に内側から鍵を掛けて、通話機も切ってあるからなぁ」

「そうね。それこそ非常ベルでも鳴らなきゃ出てこないわよ」



肩をすくめて笑いあったその時・・・



グオンッと地響きがして、建物が揺れた。



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