偽り−2


キラは女の子


「はぁい、キラ!」

「ミリィ、元気だね・・・」

「当たり前でしょ、こんないい天気だもん」



キラの通う工業カレッジ内のベンチ。

一人で一心不乱にキーボードを叩く姿は毎日のように見受けられる。

集中していたキラは、ミリアリアが肩を叩くまでまるで気づかなかった。



「キラは元気ないわねぇ。

 ダメよ、夜は寝なきゃ」



キラに話しかけながら、ミリアリアは横に腰掛けて覗き込む。



「うっ。ちょっとキラ。

 これ何よ。こんなの授業でやってないでしょ?」

「あ、うん。

 カトー教授に頼まれたやつだよ」

「またぁ?キラったらほんと、お人好しねぇ。

 そんなの学生のやることじゃないわよ。

 まさかと思うけど、そんなののせいで睡眠不足なの?」

昨夜寝てないのは、顔を見ればわかるわよ。



「あ、違う違う。

 夕べはね、ちょっと昔のことを思い出してたら眠れなくなったんだ」

だからこれをやったんであって、これのために寝てない訳じゃ・・・



否定するキラだが、ミリアリアは疑わしそうにキラを見た。

そして腕を伸ばし・・・

パソコンを取り上げてしまう。



「ちょっ、ミリィ!」

「ダ〜メ!」



「何やってるんだ?」



パソコンの奪い合いを始めた二人に、ミリアリアの恋人・トールが声を掛けてきた。

もともと、ここで待ち合わせをしていたのだが。



「ミリィがパソコン・・・」

「キラったら、徹夜で教授の頼まれ物をやってた上、まぁだやってるの」

「ありゃ。まだ終わってないんだ。

 まっずいなぁ・・・」

「ちょっとトール。キラより教授を取るわけ?」

「ち、違うって。

 カトー教授がキラを呼んでるんだよ」

きっと次の頼み事だよ、あれ。



キッと睨むミリアリアに、トールは慌てて手を振った。

誤解で怒られてはたまらない。



「そんなぁ。

 僕だってそんなに暇なわけじゃないのになぁ」

「そうよねぇ。

 この前も、レポート忘れてたもんね〜」

「キラって、どっか抜けてるんだよな。

 頼まれれば断れないし」

「そうそう。

 優秀なのも考えものよね。

 教授達までキラに頼るんだもん」

「僕の取り得ってこれだけだから」



真顔で言うキラに、ミリアリアとトールは顔を見合わせた。

二人揃って大きく息を吐く。



「わかってないよな」

「うん。わかってないわね」

「?」



ミリアリアとトールが何に呆れているのかわからず、キラは首を傾げた。

そんなキラは、とっても可愛い。

普段は口調も服装も立ち居振る舞いまで、少年のようなキラだが。

ごくたまに、妙に可愛らしくなる。

ただし、親しい人の前の限定なので、みんないろいろ手をこらす。



「ま、いいけどね。

 それがキラのいいとこだから」

「そ。鈍・・・うっ!」



言いかけたトールにミリアリアが肘鉄を入れて黙らせた。



「ミ、ミリィ!?」

「いいの、いいの。

 じゃ、まぁ、仕方ないからカトー教授のとこ行こっか」

「そ、そうだね・・・」



***



「キラ、昔からこうなのか?」

「・・・なにが?」

「頼まれたら断れない、でしょ」



別に、断るほどのことじゃないし、好きなことだからなんだけど。



「こっちに来る前は、すっごく優秀な人がいたから。

 僕が何か頼まれるなんてこと、無かったよ」

「キラより、優秀?

 そりゃ、よっぽどだな」

「うん、そうなんだ。

 あ、もちろん僕より出来る人はいっぱいいたけどね。

 アスランが一番だったよ」

ね、トリィ。



トリィ



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