ふたつの剣 TV本編第35話より | ||
キラは女の子です アークエンジェルの前にフリーダムが舞い降りたところ アスランの時制が微妙に違います |
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「こちら、キラ・ヤマト。 援護します。退艦してください」 死を覚悟し目を閉じたマリュー達、アークエンジェルのクルーの耳に、死んだと思われていたキラの声が届く。 アークエンジェルの艦橋に照準を向けるジンがいたその場所に、見たこともないモビルスーツが立っていた。 それは、アークエンジェルを背に庇い、信じがたいほどの火力によって、広範囲に展開するザフト軍のモビルスーツから、攻撃力を奪っていく。 「キラ・・・さん? 本当に、・・・キラさん、なの?」 「マリューさん。援護します。 早く、退艦を!」 アークエンジェルは、正常に航行することも難しいほどのダメージを受けている。 乗員の安全の為には、キラの言うとおり退艦するのが一番良いだろう。 だが・・・ 「ダメなの! 本部の地下に、サイクロプスがあって! 私達は囮に! 作戦なの!知らなかったのよ! だから、ここでは退艦できない! もっと離れないと!」 *** 叫ぶマリューの言葉に、フリーダムの中でキラは唇を噛む。 なんてこと。 敵も味方も、平気で殺す気なの。 そんなこと・・・させない。 させるわけにはいかない! キラは通信を全周波放送に切り替えた。 *** 「ザフト、連合、両軍に伝えます」 口を開いたキラは、その間もつぎつぎと砲撃を繰り出し、ザフト軍機に当てている。 そのあまりの火力に、両軍共圧倒された。 「アラスカ基地はまもなくサイクロプスを作動させ、自爆します。 両軍共、直ちに戦闘を停止し、撤退してください。 繰り返します・・・」 両軍共、フリーダムの出現でしばし呆然としてしまったが、この呼びかけにはっと我に返った。 だが、ザフト軍と地球軍では、その反応が異なっている。 地球軍はこのキラの放送を聞いた途端、すぐに離脱を開始した。 先のアークエンジェルの呼びかけもあるし、なによりもう劣勢を返す手立てが無い。 気力の落ちていた地球軍兵士達は、キラの言葉にすがってしまった。 ザフト軍は、キラの言葉を信じなかった。 ここには地球軍の兵士達がいるのに、それを見殺しにするはずがない。 まして、言っているのは地球軍の艦を守っているモビルスーツなのだ。 *** なんで、なんで止めないのよ! フリーダムの攻撃により、戦闘不能となった機体は撤退していく。 けれど・・・ いつ、サイクロプスが作動しないとも限らないのに! 離脱しようとする地球軍機も攻撃されている。 このままでは、本当に大虐殺だ。 と、フリーダムに至近距離から攻撃を仕掛けてくる機体があった。 「デュエル!」 地球降下時に打ち落とされたシャトルのことがキラの脳裏に浮かぶ。 ついコックピットを狙いそうになったのを、だが、寸でで変えた。 「止めてって、言ってるでしょう! 死にたいの!?」 え・・・? デュエルがここにいるってことは。 ・・・クルーゼ隊がここにいるの? それじゃあ・・・ アスラン! アスランも、ここにいるの? 嘘! ここにいる全ての人に、死んで欲しくない。 それは本当だ。 だが、それ以上に、アスランが死ぬなどもう二度と考えたくなかった。 「アスラン!アスラン・ザラ! ここにいるの!? いるなら逃げて、早く! ・・・アスラン!」 *** それまで冷静な声を発していたキラが、一転して動揺を見せた。 必死なその様子を聞き取り、ザフトの兵士達も動揺する。 なぜ敵が、あのアスラン・ザラを知っている!? 敵・・・じゃあ、ないのか? 「アスラン!!」 「キラ・・・」 「アスラン!? アスランなのね、どこにいるの!?」 「ここに・・・」 *** フリーダムの頭上から、降りてくる影があった。 赤い、機体。 フリーダムからだけわかる、その機体はジャスティス。 ジャスティスは、空中でフリーダムと対峙した。 「ジャスティス! それに乗ってるのは、アスランなの?」 「・・・フリーダムに乗っているのは、キラ・ヤマトか?」 「そうよ」 「生きて、いたのか?」 「・・・ええ」 キラの声が震えた。 また、銃を向けられるのだろうか? そうされても、キラにはもう、アスランと闘うことなど出来はしない。 もう二度と、アスランと殺し合うなど。 私は、アスランの仲間を殺した。 アスランは私を許さない。 「キラ。さっき言っていたことは、本当か?」 「え? ・・・あ、ああ、ええ、そうよ! このままだと、ここにいる全員が死んでしまうわ!」 アスランの声を聞いたことで逸れていたキラの意識が、アスランの問いかけで現実に戻る。 そう、それどころじゃなかったんだ。 早くしないと、アスランまで死んでしまう! 「アスラン、早く逃げて。 きっと、もうそんなに時間は無いわ」 *** ラクスから聞いてはいたが、アスランには、俄には信じ難かった。 いや、あの状況で生きているはずがないと思っていた。 だが、アスランにはこの声でキラ本人だとわかる。 キラが生きていた! 激情に駆られ、ストライクを、キラを殺したあの後。 アスランはどんなに後悔したか。 今すぐにでも、生身のキラを確認したかった。 しかし、キラの言うとおりならば、すぐにここを離れなければならない。 今度はアスランが、全周波放送に切り替える。 「こちら、特務隊アスラン・ザラ。 ザフト全軍、直ちに撤退してください。 戦闘を停止し、離脱を!」 *** 両軍が戦闘行為を止めたことを確認し、キラはちょっとほっとした。 だが、まだここから離れなければならない。 アークエンジェルは既にかなり移動している。 損傷は大きかったようだが、なんとか航行できていた。 キラはジャスティスをちらっと見た後、アークエンジェルの後を追う。 ジャスティスが、アスランが続くことを、キラは疑ってはいなかった。 もうじき追いつくというその時、センサーに関知されたものがある。 サイクロプスが発動されたのだ! *** 安全圏まで逃げ切ることができたフリーダムから降り立ち、かつてアラスカ基地であったところを振り返った。 「こんな・・・、こんなこと!」 そこには、非現実的な光景が広がっている。 巨大なクレーターと、それに流れ込む海水の濁流。 それが熱せられ水蒸気を発する。 ついさっきまで、人が暮らす大地であったのに。 基地内部に侵入していたもの達は、ほとんどがここまでたどりつけなかった。 運良く助かったものは、皆それを見て呆然としている。 「こんなのが、戦争なものですか! ただの、虐殺じゃないの! 人を殺すために戦争しているんじゃないはずなのに!」 叫んだキラは、近づく人の気配にはっとして振り向いた。 目を見開く。 「アスラン・・・」 「キラ・・・」 目の前に、アスランがいた。 ずっと、ずっと会いたくて、でも会えなくて。 一度は殺し合った、アスランが目の前にいる。 手の届くところに。 キラはもう、何も考えられなかった。 アスランのこと以外。 涙を溢れださせたキラは、アスランに抱きつく。 アスランもすぐにキラの背に腕をまわして、きつく抱きしめた。 「アスラン、アスラン・・・」 「キラ、本当に生きていたんだな。 すまない。俺はあの時・・・」 「ごめんなさい、アスラン。 私、私ずっと・・・っ!」 もうキラは、涙が止まらず、しゃくりあげ、言葉にならなかった。 ***end |
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キラが女の子な必要性はまったくありませんでした でも、連載で最近女の子ばっかり書いていたせいで ついつい、口調が女の子になっちゃいまして・・・ キラがせっかく呼びかけたのにあんまり助からなかったのが不満だったんです アスランがいれば、って |
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