独り−1 (TV本編1話より)


ストライクの上で再会から
キラは女の子


「アスラン・・・」

「キラ・・・」



***



キラに声を掛けてきた女性が、キラの前で撃たれて倒れた。

駆け寄って助け起こそうとしたが、彼女はすでに息をしていない。

唇を噛んだキラは近づく気配に、はっとして横を見る。

そこには、彼女を撃った相手がナイフを振りかざしていた。



一瞬のことだった。

キラにもなぜそう思ったのか、わからない。

でも・・・



紅いパイロットスーツとヘルメットを身につけ、素顔が見えない。

それでもキラは、彼をアスランだと思った。

キラがずっと、月で別れてからもずっと想い続けていた、アスランだ。



***



ラスティが撃たれ、アスランは気が急いていた。

モビルスーツを守る地球軍の兵士を撃った後、まだ横に人影が見える。

敵はすべて倒さなければならない。

銃が利かなくなったので、ナイフに持ち替えて走り寄った。



ナイフを振り上げた時、相手がこちらを向く。

その顔は・・・



アスランの動きが止まった。



地球軍兵士の横に膝をついた、少女。

それはアスランがずっと探していた、幼なじみの愛しい少女。

三年前の面影を残しながら、より美しくなった、キラだった。



***



「アスラン・ザラ、よね?」



キラはアスランを見上げ、そっと訊く。



「キラ・ヤマト・・・」



アスランは腕を下ろし、少女の名を呟く。

ナイフを戻し、ヘルメットのシールドを上げた。



「三年ぶり、ね」

「キラは、ヘリオポリスにいたんだな」

「知らせたかった、けど」

「開戦で、通信網が遮断されたから、な」

「うん」



不安定な足場の上で立ち上がろうとするキラに、アスランが手を貸す。

だが・・・



アスランの手がキラの手に触れた途端、キラは振り払ってしまった。



「あ・・・」



キラは驚いたように、自分の手を見つめる。



「なんで、私・・・。

 あ、違うの、アスラン!私・・・っ!」



キラが焦ったように見上げたアスランは、顔を背けていた。



「気に、しなくていい。

 さっきのを、見たんだろう・・・?」

俺を怖がって当然だ・・・



「違、違うのよ、アスラン!誤解しな・・・」

「危な・・・っ!」



キラから離れようとするアスランを見て、キラは焦って立ち上がろうとして足を滑らした。

アスランは咄嗟にキラの体を抱えるようにして支える。



ふぅ・・・。



キラが落ちなかったことにアスランは安堵のため息を吐き、はっと我に返った。

アスランはすぐに腕を解き、キラから離れる。



しかし、キラはそのアスランに抱きついた。



「キ、キラ!?」



慌てるアスランに、キラは答えず、そのまましがみついている。



「キラ・・・?

 無理、しなくていいんだよ」



キラは尚も無言でアスランの胸に顔を伏せ、だが、頭を振ってみせた。



「キラ・・・」



アスランはそっと、キラを脅かさないように、キラの背に腕をまわす。

キラが拒絶しないのを確認してから、ゆっくりと頭を撫でた。

すると・・・



アスランの胸の辺りから、嗚咽が漏れ出す。



「会いたかった、の。ずっと、ずっと。

 寂しくて、悲しくて・・・っ」



キラ・・・、俺の知らない間に、何があったんだ?

感情の起伏が激しいキラは、昔からよく泣いていた。

月での別れの時も、目を真っ赤にして、涙をぽろぽろ溢れさせていた。

だが、こんな辛そうなキラを俺は知らない・・・。



アスランは、すぐにも聞き出したい衝動を抑え、その耳元でやさしくその名を繰り返す。

キラ、と。



*** next

簡単に持ち帰ってもらいたいの
マリューさんらしき人、ごめんね
キラを保護しようとしてくれたはずなのにね・・・
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