独り−44


キラは女の子


「ラクス、ねぇ、着替えるから待って・・・」



ヴェサリウスはガモフと離れ、プラントへ後1日のところまで来ている。

アスランには、軍人としてするべきことがあり、キラをラクスに任せている。

ラクスの一見そうは見えない強引さに負け、仕方なく・・・。

すっかり仲良くなったキラとラクスは、二人きりでおしゃべりを楽しむことが多くなっていた。



そんな中、プラントから通信があり、二人とも艦橋へ呼び出された。



「キラ、諦めが悪いですわ。

 似合うのですから、良いじゃありませんの」

「ラクス・・・、はぁ」



相変わらず、ラクスの服を着せられているキラ。

その姿で艦内を移動しても、すでにクルー達には見慣れた光景となっている。

さして目立たなくなったと思いこんでいるキラは、それ自体はもういいのだが。

さすがに艦橋にこの格好は変だろうし、まして通信の相手が・・・。



「ねぇ、ラクス。お願いだから」

「大丈夫ですわよ。

 それに、軍服は逆にまずいんじゃありません?

 キラは軍人ではありませんものね」



楽しそうにキラの手を握って前を行くラクスを、キラも強引に振り解けなかった。



***



「久しぶりだな、ラウ・ル・クルーゼ」

「はい、ザラ評議員」



艦橋に入ったキラの目に、クルーゼと通信機越しに言葉を交わす男性が映る。



アスランの、お父様・・・?



「キラ、ラクス。こちらへ」



アスランに呼ばれ、キラとラクスはアスランと並んだ。



「あれが、アスランのお父様よね?」

「ああ。キラも一度会ったことがあったと思うんだが」

「ええ。アスランがプラントに行く少し前に・・・」

「アスラン・ザラ!」

「はっ!」



唐突に振り返ったクルーゼが、アスランを呼ぶ。



「お二人をこちらへ」

「はっ!

 キラ、ラクス」



アスランはキラとラクスの手をとり、二人を連れクルーゼの横に移動した。



「ラクス・クライン。ご無事でなによりでした」

「ありがとうございます、パトリック様。

 ヴェサリウスとガモフの皆様のお陰ですわ」

「アスランも、婚約者のあなたと会えて喜んでおりましょう」

「父上、そのことですが・・・」



婚約者、のひとことにアスランがすっと前に出る。



「ラクスとの婚約は解消致します」



公務中に父上と呼ぶアスランを諫めようとしたパトリックは、その言葉に目を見開いた。

そして、つい我を忘れて怒鳴る。



「アスラン、おまえ!」

「ラクスには既にご理解頂きました」

「そのように、お怒りにならないでくださいな。

 アスランにはもともと心にお決めになった女性がいたのですわ。

 そのことはパトリック様もご存じだったのでしょう?」



ラクスは、いつもの柔らかな笑顔を消している。

パトリックに、知っていてアスランと強引に婚約を結ばせたことを怒っている、というように。

実際には・・・



アスランとの婚約くらいはかまいませんけれど。

キラを泣かせるようなことをしたのは許しませんわ。



「あ・・・いや、それは」

「母上はよくご存じでした。

 父上はお聞きになっていたでしょう」



パトリックの妻でアスランの母であるレノアの事を出され、パトリックの顔が強ばった。



「レノアはもういないっ!」

「おばさま、どうかしたんですか!?」



再会以来レノアの話をされたことが無かったことに、キラが気づく。

そのキラの叫びに、はっとしたアスランとパトリックがキラを見た。



「アスラン、レノアおばさまに何が?」

「キラ・・・」

「君は誰だね?レノアのことを知っているようだが」

「キラ・ヤマトです。

 憶えておいででしょうか?

 月でザラ家の隣に住んでいました」

「評議員、彼女がヘリオポリスから保護した少女です」



キラの自己紹介に、クルーゼが注釈を加える。

そしてアスランも。



「私は、キラを愛しています。

 ・・・俺が結婚する相手は、キラだけです。

 父上の希望に添うことはできません」



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