独り−43 | ||
キラは女の子 | ||
「ほぉ、これはこれは・・・」 クルーゼがキラを見て、感嘆したように呟く。 それを耳にして、続けて怒鳴ろうとしたイザークが思いとどまった。 「それは、ラクス嬢のかな?」 「そうですの。素敵でしょう? 私が着るより似合っていて。 軍服なんて味気ないものを着せておくなんて、もったいないですわ」 「これは確かに」 「キラは軍人ではないんですもの、私服でよろしいわよね?」 「かまいませんよ・・・」 クルーゼは辺り、艦橋クルー達を見回す。 「女性の華やかな装いは、皆も嫌いではなさそうですからね」 含むような言い方に、焦ったクルー達は、キラに集中していた視線を手元に戻した。 クルーが仕事に戻ったのを確認し、クルーゼは向き直る。 「さて、やっと揃ったな」 *** 「ラクスの乗っていた艦、まだ見つかっていないのね・・・」 「先にプラントに戻らなくてはならないのは、残念ですわ」 「これだけ探して見つからないってことは、おそらく、そういうことだろうしなぁ」 「ラスティ!」 誰もが予想し、だが口に出さずにいたことを言ったラスティは、ニコルに鋭く呼ばれて、はっと口をつぐむ。 気遣わしげに目をやると、キラはやや青ざめていた。 「ラクス。地球軍のせいって、ほんと?」 「・・・争い事に一方的なものはほとんどありませんわ。 でも、そうですわね。 艦内での揉め事の始まりは、地球軍が査察として乗り込んで来たことですから。 不審な物は何も無かったのです。 それでも、お気に召さなかったようで・・・」 「そう・・・」 クルーゼに呼び出された用件は、ヴェサリウスが一度プラントに帰港することだった。 目的は、ラクスを送り届けること。 そして、「ヘリオポリスで保護された少女・キラ」への対応のため。 もう一つ。 ラクスとキラが・・・地球軍の行いについて最高評議会で証言することだ。 ヘリオポリスを破壊していたのは、あの白い戦艦だけど。 それだけで、地球軍が悪いと決めつけちゃいけないって思っていたのに。 あの血のバレンタインで亡くなった方々の慰霊に行ったラクス達を・・・。 俯くキラの頭をアスランが胸に抱き寄せ、宥めるように、そっと撫でる。 「でも、キラと一緒なんて、嬉しいですわね。 プラントについたら、私がいろいろ案内させていただきますわ。 キラと二人きり、でお出かけなんて、楽しみですv」 キラの気持ちを明るくしようと、ラクスは嬉しげに話しかけた。 そんなラクスに言葉を返そうとしたキラを遮り、アスランがラクスに話す。 「待ってください、ラクス。 キラには俺がいますから、あなたの手を煩わせる必要はありません。 案内は俺がします」 「あら、だってアスランはすぐここにお戻りでしょう? これは一時帰投に過ぎないとおっしゃっていたではありませんか」 「休暇の申請をしてあります。 ご心配には及びませんよ」 アスランもラクスも、表面上はとてもにこやかに話しているので、キラにはわからないが・・・。 キラ以外の面々には、アスランとラクスが、キラをとりあっているようにしか見えない。 こんなものを聞いていても楽しくないので、彼らはキラにそっと話しかけた。 「キラ、ご一緒できて、嬉しいですよ」 「私もよ、ニコル。 ・・・他のみんなとは、もう会えなくなっちゃうのね」 ニコルはヴェサリウスに乗艦していくことになっている。 しかし、他の3人はガモフで捜索の続きだ。 「キラがプラントにずっと滞在していてくれればなぁ」 「休暇になったら、会いに行くんだがな」 「やはりオーブに、というか地球に行くのか?」 「・・・わからないわ。 事情があって、地球には降りない方がいいの、私は。 でもだからって、プラントの居住権が得られるとは限らないもの。 私の後見人は、オーブ本国にいるというのも・・・」 「キラは、プラントがいいのか?」 「・・・・・・アスランがいるから///」 頬を染めて、はにかむキラはとても可愛らしかった。 見ていた4人は、チラッとアスランを見る。 アスランは小声で話す彼らに見向きもせず、ラクスとまだ言い合っていた。 「わっ!・・・なんだ!?」 突然いくつもの衝撃を加えられたアスランがやっと振り向く。 アスランを叩いたり蹴ったりしただろう人物たちは、フンッとばかりにあからさまに顔を背けた。 その様子に眉をひそめたアスランは、腕の中のキラに目を留める。 「どうした、キラ?」 「プラントに住めたらいいな、っていう話をしていたの」 「ああ、隊長も協力してくださるそうだ。 それに・・・」 周りの仲間とラクスを見回し、苦笑する。 「きっと彼らも協力してくれるよ」 *** next |
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