独り−42


キラは女の子


「行っちゃいましたね・・・」



呆れたように呟くニコル。

その視線の先には、ドレスの裾を翻すキラを連れ、勢いよく格納庫を出ていくアスランの姿がある。



「・・・心が狭い」

「え?」



ボソッと低い声で呟いたラクスを、隣にいたラスティがギョッとして振り向いた。



「あら?なにか聞こえまして?」



にっこり、といつも通りの笑顔のラクスに、ラスティはなぜか背筋に寒気がはしる。



「どうかなさいました?」

「あ、・・・あ、いや、なんでもないです・・・」

「そうでしょう」



キラは私を案内している途中ですのに。

より素敵になったキラを、皆様の視線から隠すように連れて行くなんて。

あのままのキラともっと一緒にいたかったですわ。

アスランには最後にお見せするべきでしたわ。

まさかあそこまで、アスランが・・・。



***



「ア、アスラン!?」



キラを抱えるようにして移動しているアスランは、キラに返事をしない。



「ねぇ、アスラン!

 仕事中なんじゃないの?

 私は、一人で着替えに戻れるわ。

 ・・・アスラン!」



と、そこに艦内放送が入った。

Gパイロットはキラとラクスを連れて艦橋へ、と。



さすがにアスランもこの放送には反応する。



「ちっ、こんな時にっ!」

「ごめんなさい、アスラン。

 ・・・やっぱり似合わないわよね」

「ち、違うよ、キラ。

 ごめん、そうじゃないんだ」



アスランがキラに横顔しか見せないことで、キラはよほど変なんだろうと、涙ぐんでしまっていた。

やっとキラの様子に気づいたアスランは焦る。



「すまない、そういう理由じゃないんだよ。

 ・・・とっても似合ってるのが問題なんだ!」

「?」



キラはまだ涙を浮かべたまま、アスランの微かに赤らんだ顔を不思議そうに見上げた。



この艦の中は、ほとんど男ばっかりなんだぞ。

そんなところに、キラが魅力を振りまいたりしたら・・・!

だが、そんなことキラになんて説明したら?



「綺麗なキラを、他の奴に見せたくないんだよ。

 だから、そういうのは、俺の前だけにして欲しい」

「アスラン///」



アスランは指でキラの涙を拭い、その顔にキスを降らせる。



「誤解させて、泣かせてごめん」

「おかしく、ない?」

「とんでもない。

 ・・・綺麗だよ。

 もともと、キラは綺麗だけどね。

 次は、俺に見立てさせて欲しいな。

 この、紫の瞳にあわせて・・・」

「アスラン!?」



キラを見つめながら、考え込んでしまったアスランに、キラは慌てて気を引く。



「なんだい?」

「今!今・・・呼ばれた、よね?」

「そういえば、・・・と、キラの着替え・・・」

「私も、アスランが綺麗って言ってくれたからもう十分だけど。

 ・・・お待たせしちゃ、いけないわよね?」

「・・・・・・・・・はぁ。そうだな。

 仕方がない、か」



しぶしぶというように、アスランはキラの肩を抱いて、艦橋に向かうことにした。



***



「遅いぞ、アスラン!

 ガモフから来た俺達より遅いとは・・・・・・・・・?」



艦橋には、既にアスラン以外のGパイロットとラクスが揃っていた。

待たされたのであろうイザークが、振り返りざまにアスランを怒鳴る。

が、キラの装いに言葉が止まり、口を開いたまま固まった。

そんなイザークに、他の面々も振り返る。



「キラ、そのままでいらしてくださいましたのねv」

「アスラン、着替えていて遅れたんじゃないのか?」

「おい、イザーク。おいって!」



ディアッカもキラには驚いたが、イザークがわなわなと震えだしたのに気づく。

宥めようとするが、間に合わなかった。

再び、イザークが怒鳴る。



「貴様ら、ここをどこだと思っているっ!」



*** next

Top
Novel


Counter