独り−40 | ||
キラは女の子 | ||
「ラ、ラクス、本気?」 「もちろん、本気ですわよv」 キラに軍服が似合わないと言い出したラクスは、キラを自分の服に着替えさせてしまった。 あれでもない、これでもないと、すっかり着せ替え人形にされる。 「ああ、やっぱりこのドレスが一番ですv」 「ラクス・・・、いくらなんでもドレスなんて、変なんじゃ・・・」 「まぁ、何をおっしゃいますの! 似合うものを着るのは当たり前です。 それとも、これはご趣味に合わないかしら?」 「ううん、とっても素敵だと思うけど・・・」 キラは自分が身にまとったドレスを見下ろした。 そう、とっても綺麗。 綺麗、なんだけど・・・ 「これ、華やかすぎない?」 「気にすること、ありませんわ。 さほど派手ではございませんもの。 ほら、私が今着ているのも、似たようなものです」 ああ、思ったとおり、とってもとっても、見栄えがしますわv もっともっと着飾らせてみたいんですけど・・・ 私の服では、似合うものが限られてしまって残念ですわよね。 でも、プラントに戻ったら・・・ふふふv なにやら妄想しているラクスをよそに、キラは己を鏡にいろいろな角度から映してみる。 華やかな装いとは無縁できたため、なにやら違和感を感じた。 「う〜ん。なんかやっぱり、派手というか。 カガリが見たら、目を剥くかしらね・・・」 カガリは女の子らしい服装は好きじゃないから。 「カガリ? お友達のお名前ですの?」 悩みながら呟くキラの言葉をラクスは聞き逃さない。 女の子の名前、ですわよね。 月にもコロニーにも、親しい友人はいないようでしたのに。 親友、とか言われたら・・・ まぁ、身近にいない方など敵ではありませんけれど。 「オーブに住んでいるんです。 月からヘリオポリスに移るまでオーブにいたので。 とっても優しいんですよ、彼女。 ・・・ちょっとばかり、視野が狭いけど」 最後の一言を顔を曇らせて言ったキラにラクスは気づいた。 「喧嘩でもなさいまして?」 「え?あ、・・・ああ、あ、うん。 アスランを悪く言われて、つい。 ・・・顔に出てました?」 「そうですわね」 困ったような顔をするキラに、ラクスは話題を変えることにする。 「まぁ、それはともかく。 じゃあ、行きましょう」 キラの手をとったラクスは、部屋を出るべく扉に向かった。 「行くって、・・・どこへ?」 「まぁ、お忘れですの? キラが艦内を案内してくださるのでしょう」 あ・・・ すっかり忘れきっていたキラだった。 「そ、そうだったわね。 あ、でもちょっと待って、ラクス」 通路に出たところで、止まる。 「これ、着替えないと」 「なんでですの?」 「これじゃあ、目立つもの」 目立つ、って。 軍服姿でも十分目立っていましたわよ。 そもそもザフト軍には女性兵士は少ないですし。 キラの容姿が人目を引かないはずがございません。 キラったら、まるで自覚が・・・ 「・・・ないんですわね」 「え、何?」 まじまじとキラを見つめた後、ぼそっと小さく呟いたラクスの言葉はキラには聞き取れなかった。 ほおっ、とラクスは考え深げなため息を吐く。 「アスランに見せたくありませんか? きっと驚きますわよ」 「アスランに? ・・・変に思われるとイヤ」 「なにをおっしゃいますの。 喜びますわよ、きっと。 逆に私だけが見たと知れば、妬きますわ」 それも捨てがたいですけれど。 「と、言うわけで、このまま行きましょうねv」 にっこりと笑うラクスに対し、キラは・・・抗えなかった。 *** next |
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