独り−39


キラは女の子


「私が・・・婚約者がいても?」

「はい」



言い馴れない恥ずかしさから顔を赤くしているキラは、それでもきっぱりと肯定した。

そんなキラを前に、ラクスはおもむろに立ち上がる。



「片付けますわ」



唐突な言葉に反応できないキラの手から、ラクスはカップを取り上げた。

二人分のカップを傍らの机に置く。

そうしてラクスは、座るキラの目の前に立ち・・・



「可愛いですわ!」



ラクスはキラに覆い被さるようにして抱きついた。

キラの頭を胸に抱きしめて、髪に顔をうずめる形になる。



可愛いわ、可愛いわ。

アスランったら、ずるいですわ。

こんな可愛いキラを独り占めするつもりですのね!



しかしキラにしてみれば、突然視界が塞がれて、どうなったのかよくわからなかった。

いや、ラクスに抱えられているのはわかるが。



「あ、あの、ラクス?

 ど、どうしたの・・・?」



恐る恐る、と声を出したキラに、ラクスもはっと我に返った。



「あ・・・と、失礼しましたわ」



ラクスいつものふわふわ笑顔を作り、取り繕う。



まずは、仲良くならなくてはね。

コロニーでは親しい人を作らなかったというし。

どうやらアスランが親友兼恋人のようですから。

うふふふっ。

キラの親友の座は私がいただきますわ、アスラン!



「キラの恋は、私も応援しますわよ」



キラのすぐ横に斜めに腰を下ろしたラクスは、キラの手を両手で握った。

目線を合わせて続ける。



「アスランに聞いたでしょう?

 私達、仕方なく婚約してますのよ」

「あ、えっと・・・」



いきなり物凄く友好的になってしまったラクス。

キラは戸惑いが隠せない。



「私にとって、アスランは友人に過ぎませんの。

 もちろん、嫌いではありませんけどね。

 キラが彼を好きだとおっしゃるなら、協力しますわ」



ほんとは、キラはアスランにはもったいないと思いますけど。

本人の希望では、ね。

泣かせたくありませんもの。



「あ、・・・ありがとう、ラクス」



やっと、ラクスの言った意味が飲み込めたキラ。

嬉しさがこみ上げて来て、目に涙を浮かべながら、ラクスに笑顔を向けた。



初めて見た満面の笑顔のキラに、抱きしめたい衝動をラクスは耐える。



どうしましょう。

可愛すぎますわよ、キラ。

よく、今まで無事に・・・。



「さっきはごめんなさいね」



謝られても、なんのことなのかキラにはわからない。

キラは首を傾げ、目を瞬いた。



「ちょっと、意地悪っぽかったでしょう、私」



確かに、意地悪、というか、怖かったが・・・。



「キラの人となりを知りたかったんですの。

 試すような言い方をしてごめんなさい。

 アスランの、友人として!・・・心配したものですから」



妙に友人を強調するラクスの言は怪しかった。

だがラクスと初対面のキラは気づかない。



「あ、そんなことは・・・」

「キラ、私たち、お友達になれますわよね?」

「もちろん」



にっこり、と微笑みを向け合った。



「そういえば・・・」



今、気が付いた、というようにラクスはキラの衣服に目を向ける。



「なぜ、軍服を着ていらっしゃいますの?」

「あ、アスランが用意してくれたんです。

 着替えは持っていなかったし・・・。

 やっぱり、変かしら?」



変、というわけではないのですけど・・・



*** next

ラク→キラ
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