独り−35


キラは女の子


「どうした、キラ。

 目が真っ赤だぞ」



朝一番に医務室を訪れたキラを見るなり、ラスティは身を起こした。



「なにか、あったのか?」

「・・・うん。いろいろと」



昨日泣いたことが、自分の顔に出ている自覚がキラにもある。



「ラスティは、元気になったみたい」

「ああ。今日にも退院(?)だよ。

 昨日、やっと医者の許可が下りたんだ。

 あ、そうそう。

 俺は別の部屋に移るから、キラはそのまま部屋にいろよ。

 アスランと一緒の方が落ち着くだろ?」

「ありがとう。でも、いいのよ、もう」



話をしながら、キラは傍にあった椅子に腰掛けた。



「昨日、違う部屋を用意してもらったわ。

 だから、ラスティは自分の部屋に戻れるわよ」

「・・・アスランと喧嘩でもしたか?」



訊かれて、キラは昨夜を思い出す。



「・・・いいえ。ケンカ、は、してないわね」



ラスティが心配そうに見ていると、ちょっと考えるようにしたキラは・・・

頬をうっすらと赤く染め、恥ずかしそうに答えた。



何した、アスラン?



「あ、それでね。ラスティに訊きたいことがあって来たの」



見つめてくるラスティに、キラは誤魔化すように慌てて話題を変える。



「なんだ?」



それで、朝っぱらから来たのか。

わざわざ俺に訊くからには、アスランには訊けないことだよな。



「ラクス・クライン、のこと。

 ラスティも知ってるでしょ?」

「ラクス、って・・・」

そりゃ、知ってるが。



歌姫ラクス・クライン。

プラントの住人で知らない奴はいないだろう。

そして、アスラン・ザラの婚約者。

これも、・・・有名だ。

キラは、どのことを訊いているんだ?

まさか・・・



「聞いたのか?」



主語の無いラスティの問いに、だがキラにも通じた。



「アスランの婚約者だってことは」



ラスティはその答えに顔をしかめる。



キラが泣いたのは、そのせいか!

あの馬鹿、何も今その話をすることねぇだろうが。

でも・・・、待てよ。

それでなんで、キラが笑ってるんだ?



「ラスティは、彼女と面識あるの?」

「あ、ああ。ある、っちゃぁあるな。

 あっちは憶えてないだろうけど」



なにしろ、俺が会ったのは一回きり。



「どんな人?憶えてる?」

「う〜ん、そうだなぁ・・・。

 見かけは可愛かったな、うん。

 なんていうか、動じない人だと思った記憶があるよ」



ちょっと天然っぽいけどなぁ。

我ながら、一回会っただけでこの感想も・・・。



「でも、こんなこと聞いてどうする?

 そりゃ、プラントに行けば会うことにもなるかもしれないが」

「今日会うの」

「・・・・・・・・・・は?」



事も無げに言うキラに、ラスティは頭の中が疑問符でいっぱいだ。

だが、そんなラスティに気づかず、キラは話を続ける。



「アスランは大丈夫だ、って言うんだけど。

 というか、私に会いたがっているって言うんだけど」

「ちょ、ちょっと待て、キラ。

 なんで、キラがラクス・クラインと会えるんだ?

 それも、今日?」



自分の考えに夢中だったキラは、ここでやっと気づいた。



「ラスティ、あなた聞いてない?」

「何を?」

「彼女が救助されて、今、この艦にいること」



だから、キラがラクスの話をされたわけか!

しかしアスランの奴、キラとラクス嬢に、どんな話をしたんだか・・・



*** next

場面をすっとぱしてしまいました
さて、昨夜何があったのでしょう?
まぁ、軍艦の中ですし、ラクスも近くの部屋にいるんですし、ね・・・
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