独り−33 | ||
キラは女の子 | ||
「キラ」 扉の向こうからアスランの声が聞こえてくる。 こんな・・・泣いている姿を見せたくなくて、キラは返事を返さない。 「キラ、話がしたい。開けてくれないか」 今は、聞きたくない。 まだ自分の中の整理が出来てないの。 ごめんなさい。 キラは心の中で謝りながら、寝たふりをとおした。 「キラ!」 いくらアスランが呼びかけても、中から応答は無い。 キラは確かにこの部屋の中にいるはずなのに。 部屋を移ったということは、キラはラクスのことを聞いたのだ。 キラ、泣いているのか? もしもキラがひとりで泣いているならば、放っておくなど、とてもできなかった。 普段なら、絶対に女性の部屋に踏み込むような真似はしない。 だが・・・。 意を決したアスランは、声も掛けずに扉を開いた。 キラは扉の開く音に驚いて、伏していたベットから体を起こして振り返る。 視線の先には、アスランが立っていた。 「アス、ラン・・・!」 「キラ・・・」 照度を落とした部屋の中でもわかる。 アスランを見たキラの頬は、涙に濡れていた。 歩み寄ったアスランは、キラに手を伸ばす。 が、触れる寸前、キラがびくっとして身を引いた。 キラ・・・ アスランはキラのすぐ横、キラの乗るベットに斜めに腰掛け、キラの間近に顔を寄せる。 キラはさらにびくっとして、勢いよく顔を背けた。 「キラ。俺のことが、嫌いになった?」 アスランの問いかけに、キラは一瞬の間を置いた後、首を振ることで答えた。 「俺はキラが好きなんだ。今でも、信じられる?」 今度は迷い無く、キラは首を縦に振る。 「キラ、こっちを向いてくれないかい? 話をさせて欲しい」 懇願するようなアスランに、だがキラは振り向けなかった。 アスランの顔を見たら、言ってはいけないと思うことすら言ってしまいそうで。 感情が、理性を押しつぶしそうで。 「お願い、今は・・・」 キラは震えを止められぬ声で、アスランに告げる。 「話は、聞くわ。 でも・・・、明日にして欲しいの。 ・・・ごめんなさい」 長い沈黙の後、アスランが立ち上がるのをキラは気配で感じた。 部屋を出ていくと思ったキラは、小さく、安堵のため息を吐く。 先延ばしにしたところで、変わるわけではないけど。 これで、気持ちの整理をする時間がとれるわ。 ため息とともに緊張感が少し緩んだキラ。 しかし、そのキラの腕が、突然痛いほどの力で引っ張られた。 「なっ・・・、きゃっ!」 もちろん、キラを引き寄せたのは、アスランだ。 キラはその勢いのまま、アスランの胸に倒れ込む。 アスランにしがみつくようになった自分に気づいたキラが離れようとするのを、アスランがその背にまわした両腕に力を込めた。 「キラ」 「は、放してっ!」 「キラ、聞いて」 「イヤ!明日にして、って言ってるでしょう!」 「キラ!」 一際強く呼びかけられ、キラの抵抗が止まった。 「ラクスのことは、聞いたね?」 アスランの軍服を掴んだキラの両手に、力が入る。 「・・・最高評議会議長の娘で」 「ああ」 「・・・プラントの歌姫で」 「ああ」 「アスラン、の・・・」 「・・・僕の?」 「・・・・・・・・・婚約者、なんでしょう?」 *** next |
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う〜ん ちょっとアスランが意地悪っぽいなぁ |
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