独り−31


キラは女の子


「ラクス!いったい、何があったんです?」



艦橋に着くまでに、ニコルからラクスのことを聞かされたアスランは、ラクスを見るなり問いかけた。

しかし・・・



「まぁ、アスラン。お久しぶりですわね」



何の憂いもない顔で、ふんわりと笑ったラクスには、緊張感の欠片もない。

救命ポッドなど、よほど危険な目にあったのではと心配したアスランは気が抜けてしまった。



「・・・お元気そうですね、ラクス」

「もちろんですわ。

 あなたは、・・・お疲れかしら?」



アスランが形を落とした様子を見て、ラクスが小首を傾げる。



「・・・・・・・・・精神的なものです。お気になさらず。

 それより、なぜ、あなたが?」

「先頃、ラクス嬢がユニウス7への追悼慰霊団代表になったのは知っていよう」



クルーゼが口を挟んだ。



「その艦が、地球軍の艦と接触し、臨検を受けたらしい」

「特に問題は無かったんですのよ。

 ただ、地球軍の方々には、私たちの目的がお気に召さなかったようで。

 艦内の空気がちょっと・・・」

「護衛が彼女を救命ポッドに、ということだ」

「では、その艦は・・・?」

「ラクス嬢がポッドで射出された時間と、艦の消息が絶たれたのはそう違わない。

 おそらくは、・・・そういうことだろうな」



クルーゼは残念そうに嘆息した。



「件の行方不明艦は、ラクスの乗った艦だったのですね」

「そうだ。はっきりするまでは、公にするわけにはいかないだろう」



言って、クルーゼはラクスに向き直る。



「ラクス・クライン。

 あなたのご無事は、既に本国に伝えてあります。

 ですが、しばらくこの艦に滞在して頂きたい。

 ご協力願えますかな?」

「戦火の拡大を防ぐためでしたら、いくらでも。

 でも、軍の人間でない私が乗っていても、よろしいんですの?」

作戦行動中ですわよね?



即座に同意したラクスだが、クルーゼに質問で返した。

当然の配慮ではあったが、現在のこの艦には・・・



「既に、民間人が一人、同乗しております。

 お気遣いは無用です。

 ・・・アスラン・ザラ。ラクス嬢を御案内せよ」

「はっ!」



不思議そうな顔になったラクスには構わず、クルーゼはさっさとアスランに押しつけた。

引き続き、ラクスの乗っていた艦の捜索を進めなければならない。



***



「お怪我も無いようで、安心しました」

「ありがとうございます」



アスランはラクスを連れて、居住区へ向かっている。



「お聞きしても、よろしいかしら?」

「何ですか?」

「クルーゼ隊長がおっしゃっていた、民間人の方のことですわ。

 私、お会いできるのかしら?」

「・・・はい」



キラとラクスを、会わせる。

突然のラクスの出現に驚き、大切なことを失念していたアスランだった。



「・・・私は、お会いしない方がよろしいの?」



返事をためらったアスランに、ラクスは残念そうに訊く。



「いえ、・・・いえ、そんなことは、ありません」



今、対面を避けたところで、キラをプラントに連れて行けば同じことである。

ただ、キラに自分の口から先に伝えておくべきではあった。

そして、ラクスにも。



「どんな方ですの?」

「オーブの、民間人です」

「オーブ?なぜ、他国の方が?

 ・・・聞いては、いけないんですの?」

「詳しいことは、話せませんが。

 キラについては、ご説明します」



そうして、アスランは手短に、キラについて話した。



「あなたの、幼なじみ・・・。

 では、以前お聞きした、あの方ですのね」

「そうです」

「キラ・ヤマト。

 ふふふ。あの彼女と、ここでお会いできるなんて。

 とても楽しみですわ。

 彼女には、もちろん私とのことをお話済みなんですわよね?」

「それが・・・」



アスランの言い淀む様子に答えを読みとったラクスから、初めて笑顔が消える。



「アスラン、あなた、まさか・・・?」



*** next

ラクス出ましたね
クルーゼさんは、すっかり普通の人ですが
ラクスはどんな人だろう・・・?
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